Sep 02, 2023 interview

製作面で支え続けた 齋藤朋彦が語る 山田洋次監督の作品と吉永小百合が新たな境地をみせた『こんにちは、母さん』

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東京現像所は、一流の職人の集まり

池ノ辺 今回、齋藤さんにお話を伺いたいと思ったのは、今年11月に事業を終了する東京現像所が、山田組とは随分仕事を一緒にされてきたと聞いたからなんです。

齋藤 僕にとって東京現像所はフイルムを学んだところです。本当にいろんなことを勉強させてもらいました。まさに、一流の職人の集まっているところなんです。

池ノ辺 山田監督は、フイルムに思い入れがありますよね。

齋藤 できる限りフイルムで残したいという思いは持っていますね。フイルムとデジタルで何が違うかというと、いちばんの違いはグレーディング。フイルムにはデジタルにない色の幅、奥行き、深みがあって、それを調整してくれるのがカラーグレーダーです。

池ノ辺 いわゆるカラリストですね。

齋藤 東京現像所には日本一のカラリストがいたんですよ。

池ノ辺 山田組ではデジタルになっても東京現像所のカラリストさんを使っていると聞きました。

齋藤 そうです。デジタルになるとどうしても独特のデジタル感みたいな、何かスッキリしすぎているような質感が出てしまうんですよね。それを東京現像所さんはできる限りフイルムの質感に寄せてくれるすごい職人技です。それから、『男はつらいよ』も毎回大変な仕事をしてもらいました。あの作品はお正月映画として公開していましたけど、大体10月5日から10日頃にクランクインして、12月の10日くらいに撮影が終わります。

池ノ辺 12月末に初号ですよね。すごいスケジュールですよね。

齋藤 とにかくできたところから東京現像所に送って作業してもらって、我々は東京現像所の中の宿泊施設に泊まって待っていて、ダビング終わりの翌日の朝4時頃にまず0号が出ます。それをすぐに見て、修正して、初号が10時か11時頃に出るわけです。そこから現像所さんができたフイルムを遠い劇場から順に送っていくんです。

池ノ辺 お正月公開で、みなさん楽しみに待っていますからね。

齋藤 本当にすごい職人技で仕上げてもらっていました。