Apr 22, 2023 interview

藤井道人監督が語る 河村光庸プロデューサーの遺志を継ぐものとして挑んだ『ヴィレッジ』

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役者たちの力、スタッフたちの力

池ノ辺 主演の横浜流星さん、かっこよかったですね。

藤井 それはよかった。ありがとうございます。

池ノ辺 ずっと組まれていますよね。

藤井 彼が18歳で僕が28歳のときに顔見知りになって、僕の『青の帰り道』(2018) という映画で一緒に仕事をして、その時、僕が30歳で彼が20歳です。そのときから、どちらかというと現場でというよりはプライベートで一緒にいることが多いんですけど。

池ノ辺 彼は、どんどんいい役者になっていると思います。

藤井 最初はもっとやんちゃな男の子でしたけど、どんどん侍のようになってきました。シンプルにシンプルにそぎ落としていって、時代のノイズに流されないようなシンプルないい役者になっていったなというのは常々感じています。

池ノ辺 真面目でストイックで一生懸命というのは聞いていましたけど、現場でもそうだったんですか。

藤井 そうですね。現場が彼にとってはある種、存在証明の場ですから、現場では、俺が主役だということはなくて、一俳優として片隅で出番をじっと待つ。監督が、もう1回と言ったらもう1回全力でやるというようなことを繰り返し続ける。すごく心の強い俳優です。

池ノ辺 もまれてもまれて、そうなっていったんでしょうか。

藤井 あとは、いろんな先輩たち、たとえば『新聞記者』で綾野剛さんと出会ってその人たちの現場を見て、自分に足りないところをすごく悔しく思っていたんでしょう。でもテレビドラマではちゃんと数字の取れる主演として頑張らなければいけない。そういう葛藤の中で一緒に戦ってきたという思いはあります。

池ノ辺 他にも素晴らしい役者さんたちがたくさん出ていました。

藤井 それはもう最高でした。役者さんたちには本当に助けられてばかりでした。

池ノ辺 特に印象に残っている役者さんはいますか。

藤井 もちろん全員そうなんですが、先ほど村社会で若い人たちをという話をしました。今回その両翼として責任を担っていたのが、奥平大兼君と作間龍斗君です。2人とも影のMVPっていうくらい、本当に素晴らしい演技を見せてくれました。

池ノ辺 そうなんですね。ちなみに、この村は実際にあるんですか。

藤井 これは京都の美山町 (南丹市) というところで撮影しています。ただしこの集落の中には宿がなかったので、京都駅の近くに泊まり、毎日1時間半かけて車で通いました。

池ノ辺 村の自然や家々の風景、色の感じも素敵でした。カメラワークもよかったですね。カメラマンはいつも組んでいる方ですか。

藤井 カメラは川上智之君で、長編映画では今回初めて一緒に組みました。彼は僕と同い年で、もともとは写真家です。ミュージックビデオや短編はやったことがあるんですが、長編は初めてでした。この作品では例えば能の舞台のような様式美を表現したいところがあって、一枚画がしっかり撮れるカメラマンで行きたいということだったんです。素晴らしいカメラワークでした。

池ノ辺 監督は、これまでずっと同じチームでやってこられていますよね。

藤井 基本は大学からずっと一緒にやってきた同じチームでやっています。同じメンバーでここまで上がってきたという誇りもありますからね。でも今回は、いつものメンバーと新しいメンバー、半々でつくりました。