Mar 31, 2023 interview

前田哲監督が語る 極限まで削ぎ落としたセリフと芝居を生かすための工夫を重ねた映像で作り上げた 『ロストケア』

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映画を撮っている時、自分が生きていると実感できる

池ノ辺 プロフィールを拝見したら、超売れっ子監督ですよ。監督は今もずっと忙しそうですね。

前田 たまたま去年だけですよ。1月、3月、8月と撮影が入って、1月は、広瀬すず主演の『水は海に向かって流れる』、3月は『ロストケア』、8月は神木隆之介主演の『大名倒産』を撮っていました。

池ノ辺 劇場公開も続きましすね。

前田 でも去年は上映作が一作もないです。一昨年の2021年に『そして、バトンは渡された』と『老後の資金がありません!』がほぼ同時公開でした。

池ノ辺 昨年は上映がなかったんですね。そういえば、2008年の『ブタがいた教室』は、私が予告を担当させていただいたんです。

前田 あれはまさにディベート映画でしたが、僕は『ロストケア』でも、主人公2人のぶつかり合いのディベートがやりたかったという思いが強くありました。もちろんそれだけではエンタメにはならないので、その周りにはドラマがあるわけですけど。

池ノ辺 最後になりましたが、監督にとって、映画ってなんですか。

前田 人生ですね。映画がなければ生きていないとは言いませんけど、これしか知らないんで。小学生の頃から映画の世界に入りたいと思って入って、映画に救われて、映画に励まされ、映画を撮っている時が、自分が生きていると実感できる。そういう存在です。映画をキャストとスタッフと共に生み出すことはできても、育てていくことは観客の皆さんに委ねるしかない。いつも遠くから我が子を見つめる気持ちでいます。

池ノ辺 今後もますます忙しく、活躍されるということですね。応援してます。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理

プロフィール
前田 哲(まえだ てつ)

監督

撮影所で大道具のバイトから美術助手を経て、助監督となり、伊丹十三、滝田洋二郎、大森一樹、崔洋一、阪本順治、松岡錠司、周防正行らの作品に携わる。1998年相米慎二監督のもとで劇場映画監督デビュー。2021年報知映画賞監督賞を受賞。主な監督作品は、オムニバス映画『ポッキー坂恋物語 かわいいひと』(98)、『GLOW 僕らはここに…。』(00)、『sWinG maN』(00)、『陽気なギャングが地球を回す』(06)、『ブタがいた教室』(08)、『猿ロック THE MOVIE』(10)、『極道めし』(11)、『王様とボク』(12)、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)、『ぼくの好きな先生』(19)、『そして、バトンは渡された』(21)、『老後の資金がありません!』(21)など。公開待機作は『水は海に向かって流れる』(23年6月公開予定)、『大名倒産』(23年6月23日公開予定)。

作品情報
映画『ロストケア』

早朝の民家で老人と介護士の死体が発見された。捜査線上に浮かんだのは死んだ介護士と同じ訪問介護センターに勤める斯波宗典。彼は献身的な介護士として介護家族に慕われる心優しい青年だった。検事の大友秀美は斯波が務める訪問介護センターで老人の死亡率が異常に高いことを突き止める。この介護センターでいったい何が起きているのか?大友は真実を明らかにするべく斯波と対峙する。「私は救いました。」斯波は自分がしたことは「殺人」ではなく「救い」だと主張する。斯波の言う「救い」とは一体何なのか。なぜ、心優しい青年が未曽有の連続殺人事件を起こしたのか。斯波の揺るぎない信念に向き合い、真相に迫る時、大友の心も激しく揺さぶられる。真の正義とは、本当の幸せとは、を深く考えさせられる慟哭のヒューマンサスペンス。

監督:前田哲

原作:「ロスト・ケア」葉真中顕 著 / 光文社文庫 刊

出演:松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす(ずん)、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子 / 柄本明

配給:東京テアトル 日活

©2023「ロストケア」製作委員会

公開中

公式サイト lost-care.com

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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