Feb 24, 2023 interview

秦基博が語る 一つの曲から全く違う表現が生まれる面白さ『イカロス 片羽の街』

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秦基博の新曲「イカロス」にインスピレーションを受け、3人の映画監督がそれぞれ完全オリジナル脚本で映画を制作。3本の作品を束ねた映画『イカロス 片羽の街』が完成した。テーマは“喪失。同作は「トイレのハナコ」(児山隆監督)、「豚知気人生」(枝優花監督)、「十年と永遠」(中川龍太郎監督)の3本からなるオムニバス映画で、それぞれの監督が脚本も担当した完全オリジナル作品となる。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、映画『イカロス 片羽の街』の基となる楽曲「イカロス」を発表したシンガーソンングライター 秦基博さんに、本作品や音楽への想いなどを伺いました。

一つの曲から全く違う表現が生まれる面白さ

池ノ辺 今回の映画『イカロス 片羽の街』は、秦基博さんの新曲「イカロス」にインスピレーショを得て作られたということですが、「イカロス」という曲はどのようにして作られたのですか。

 こういう曲を書きたいという自分のイメージが形になって、まずメロディーとアレンジを作ったのが2021年の秋頃です。そこから歌詞をつくり上げたのは去年ですから、そういう意味ではじっくり時間をかけて作ったという感じです。自分の中では、何か特別なきっかけがあってというよりは、その時にやりたいことを形にしたら「イカロス」という曲になったという感覚が近いですね。

池ノ辺 降りてきたんですか?

 どちらかというと、湧いてきたというほうが近いかもしれないですね(笑)。

池ノ辺 素敵な曲なので、映像をつけてみたらどうだろうかという流れかと思いますが、この映画化のプロジェクトが始まったときにはどう感じました?

 まず、楽曲が出来上がったときに、すごく映像的な楽曲だという印象が自分でもあって、普段であればミュージックビデオという形になると思うんです。それが、新しいアプローチとして、映画を作っていただくという企画が立ち上がってきて、そのときにはもう楽しみでしかなかったですね。どんな物語、どんな映画が生まれてくるのか、しかも今回はオムニバスという形で3本ある。本当に楽しみでした。

池ノ辺 出来上がったものを実際にご覧になって、いかがでしたか。

 一つの曲がこんなふうに違った受け止め方がされて、違った表現の作品が生まれてくるんだという驚きと感動と、という感じでした。

池ノ辺 秦さんご自身が思い浮かべていた映像とも違っていましたか?

 全然違いましたね。もちろん僕が曲を書くときは自分の中にあるイメージなどを形にしているわけですが、それを受け取ってくださった3人の監督さんたちから生まれてくるものが、それぞれ全く違って、でも一つの曲を起点にしているので、どこかで繋がっている。それはすごく新鮮な体験でした。

池ノ辺 私もすごく面白く拝見しました。それぞれの監督で全然違うのにどこか統一感もあって、そこから秦さんの曲の奥行きがどんどん広がっていく感じもしました。
こうした経験は、秦さん自身のこれからの音楽にも影響を与えるものでしたか。

 僕自身は、もともと、自分の楽曲を通して、聴いてくれた方がどれだけそれぞれのイメージを広げてくれるか、どういったイメージがそこに立ち上がってくるのかということを大事にしているので、それをより明確に、目に見える形で感じることができましたね。これからも聴く人の中に、いろんな思いや景色が広がるような楽曲が、作っていけたらいいなと思います。