Nov 12, 2022 interview

中江裕司監督が語る 沢田研二のカリスマ性に驚き、土井善晴と“人”を表す料理を考えた『土を喰らう十二ヵ月』

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映画には愛しか映らない

池ノ辺 映画監督になって、どれくらいですか?

中江 プロの監督になってから30年でしょうか。

池ノ辺 それはかなり長いですよね。30年作り続けてきて、監督にとっての映画ってなんでしょうか。

中江 これは僕自身が感じている言い方になりますが、「映画は愛しか映らない」ということです。映画は監督やスタッフの映像表現の手段ではないですから、結局いろいろ小細工をしたところで、それは効かない。たまたまできるものが映画であり、そこに愛が映る、というより愛しか映ってこないんです。それをひたすら信じて撮る。それを信じて映画を作るんです。

そしてこの映っているものというのは、観客の皆さんの中に映ってはじめて、それとして存在できるものですから、僕はいつも不完全なものしか作れないなと思いながら、今も映画を作っています。

僕も今年で61歳になりましたが、ここにきて、やっと本当にスタートに立てたかな。ほんの少しだけですが、映画の秘密がわかったような気がしています。それで、じゃあここからもっと先に行くにはあと何年かかるのか。50年はかけないとちゃんとした映画は撮れないんじゃないかと思うと、もう寿命が足りないじゃないかと(笑)。

池ノ辺 とにかく健康でいることですね。お互いがんばっていきましょう。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理

プロフィール
中江 裕司(なかえ ゆうじ)

監督・脚本

1960年11月16日、京都府生まれ。琉球大学農学部卒業。80年に琉球大学入学と共に沖縄に移住。琉球大学映画研究会にて多くの映画を製作。92年、『パイナップル・ツアーズ』の第2話「春子とヒデヨシ」でプロデビュー。99年、『ナビィの恋』を監督。沖縄県内をはじめ全国的に大ヒット。2003年、『ホテル・ハイビスカス』が、全国公開され大ヒット。05年に那覇市に「桜坂劇場」をオープンし、運営会社のクランク代表取締役社長に就任。映画監督として活動しながら、桜坂劇場を経営している。

作品情報
映画『土を喰らう十二ヵ月』

長野の山荘で暮らす作家のツトム。山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を送っている。時折、編集者で恋人の真知子が、東京から訪ねてくる。食いしん坊の真知子と旬のものを料理して一緒に食べるのは、楽しく格別な時間。悠々自適に暮らすツトムだが、13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいる。

監督・脚本:中江裕司

料理:土井善晴

原案:水上勉「土を喰う日々 ーわが精進十二ヵ月ー」(新潮文庫刊)、「土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月」(文化出版局刊)

出演:沢田研二、松たか子、西田尚美、尾美としのり、瀧川鯉八、檀ふみ、火野正平、奈良岡朋子

配給:日活

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

公開中

公式サイト tsuchiwokurau12.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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