Sep 18, 2022 interview

原田眞人監督が語る 『ヘルドッグス』は暴力を介した男たちのラブストーリー

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映画の巨匠たちから受け継いだものを、次の世代につなげていきたい

池ノ辺 原田監督はなぜ映画監督になろうと思ったんですか?

原田 14歳の頃から映画監督という存在を意識はしてました。一番初めに意識したのは、スティーブ・マックイーンの『突撃隊』(1962)を観に行った時です。ドン・シーゲル監督の作品だったんですが、観終わってからどういう人が監督をしたんだろうと気になってその名前を覚えました。

そもそも家は旅館業でしたので、よく伊豆のロケで撮影隊が来ていたんです。そのうち大映の撮影助手の人と母が親しくなって、僕が小学生の夏休みに京都に行って太秦を拠点に大映や松竹の撮影所を回ることができたんです。そこでの当時の映画監督は、皆ハンチングを被って頼れる優しいおじさんという感じでした。ですから、映画監督というものの外見のイメージはそこで持ったんです。

でも実際に映画を観た時に、この作品の監督を知りたいと思ったのは、シーゲル監督が初めてです。それ以後、映画を見るたびに監督の名前を意識するようになっていきました。

池ノ辺 10代の頃から、映画の道に行こうと考えていたんですね。

原田 そうですね。でも自分はいろんなコンプレックスも抱えていましたから、監督は無理だろうなという思いもあって。ですから映画の道に進むにしても最初は評論家とかがいいかなと思ってました。そのうち、脚本家になる、じゃあ次は監督と、順に少しずつ進んでいった感じですね。

原田眞人監督が語る 『ヘルドッグス』は暴力を介した男たちのラブストーリー

池ノ辺 映画製作の現場に入るようになったのは、何かきっかけがあったんですか。

原田 最初は日本の撮影現場を見て、そのあとアメリカの大学に留学した時に、向こうの映画の撮影現場も見たいと思って、「キネマ旬報」から特派員の委任状のようなものをもらって、撮影現場に出入りできるようになったんです。

僕が行っていたのは1970年代の初め頃ですが、一方でスピルバーグやジョージ・ルーカスたちが出てきて、その一方で、サイレント時代からいたハワード・ホークス、ビリー・ワイルダー、ヒッチコックら巨匠たちがまだつくっている、そういう時代だったんです。ちょうど新旧の映画監督たちが雑然と一緒になっていて、その両方に会えたという、すごくいい環境でした。

池ノ辺 うわぁ、それは素晴らしい時代でしたね。そうした経験があって、これまでいろんな作品をつくってこられたわけですね。では最後に。原田監督にとって映画とはなんでしょうか。

原田 自己表現の手段であり、自分の中での歴史の流れが映画ですね。映画の歴史の中で、いろんな有名監督、巨匠と呼ばれる監督たちから受け継いだものを、次の世代に渡していきたいということです。

たとえば、さっき話に出たサミュエル・フラー監督。今はどんなに映画好きでも、それ誰?っていうくらい、知ってる人は少ないと思います。でも『ヘルドッグス』を観て、フラー監督の『東京暗黒街・竹の家』を参考にしていると聞いて、その映画は、日本人にとっては国辱映画と言われたけれど、1950年代にハリウッドのプロダクションが日本に来て東京でロケをして、当時の警視総監らの協力によって街中での発砲シーンなどが実現したとか、そういった歴史的な事実も学ぶ機会ができるわけです。サミュエル・フラーとは個人的にも親しくて、僕は彼のそういう遺産を受け継いでいる。

あるいは、コッポラ監督の『地獄の黙示録』で、マーロン・ブランド演じるカーツ大佐が読んでいた本が、劇中に出てくるとか、こんなビジュアルに生かしているとか、そういったことを話せる機会につなげていけるわけです。そこからまた次の世代の人たちがヒントを得て、何か書いたり作ったりするかもしれない。それはとても有意義で楽しい作業だと思います。

池ノ辺 次の作品には一体どんなオマージュが入っているのか、それも楽しみですね。

原田眞人監督が語る 『ヘルドッグス』は暴力を介した男たちのラブストーリー

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理

プロフィール
原田 眞人(はらだ まさと)

監督・脚本

1949年7月3日生まれ。静岡県出身。黒澤明、ハワード・ホークスといった巨匠を師と仰ぐ。79年に『さらば映画の友よインディアンサマー』で監督デビュー。『KAMIKAZETAXI』(95)は、フランス・ヴァレンシエンヌ冒険映画祭で准グランプリ及び監督賞を受賞。『金融腐蝕列島〔呪縛〕』(99)、『クライマーズ・ハイ』(08)、『わが母の記』(12)、『駆込み女と駆出し男』『日本のいちばん長い日』(15)など数多くの作品を手掛けている。17年公開の『関ヶ原』では第41回日本アカデミー賞優秀監督賞、優秀作品賞などを受賞。18年公開の『検察側の罪人』、21年公開の『燃えよ剣』の公開が記憶に新しい。『ラストサムライ』(03/エドワード・ズウィック監督)では、俳優としてハリウッドデビューを果たしている。

作品情報
原田眞人監督が語る 『ヘルドッグス』は暴力を介した男たちのラブストーリー
映画『ヘルドッグス』

正義も感情も捨て、腕っぷし一つでヤクザ組織に潜入しのし上がる元警官・兼高昭吾。兼高は、愛する人が殺される事件を止められなかったというトラウマを抱え、闇に落ち、正義も感情も捨て復讐することにのみ生きていた。その闇と狂犬っぷりに目をつけた警察組織から、ヤクザ組織への潜入という危険なミッションを強要される。

脚本・監督:原田眞人

原作:深町秋生「ヘルドッグス 地獄の犬たち」(角川文庫/KADOKAWA刊)

出演:岡田准一、坂口健太郎、松岡茉優、MIYAVI、北村一輝、大竹しのぶ、金田哲、木竜麻生、中島亜梨沙、杏子、大場泰正、吉原光夫、尾上右近、田中美央、村上淳、酒向芳配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

©2022 「ヘルドッグス」製作委員会

公開中

公式サイト helldogs.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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