Sep 17, 2022 interview

荻上直子監督が語る 頭にあったいろんなものがつながってできた『川っぺりムコリッタ』

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映画が降ってくる瞬間

池ノ辺 “ムコリッタ”って、どういう意味なんだろうと思いながら観ていると、いつもの荻上監督の作品に出てくるような、おいしいご飯がいっぱい登場していました。、イカの塩辛もおいしそうで(笑)。主人公がイカの塩辛工場で働いてる設定はどうやって生まれたんですか?

荻上 なぜかイカの塩辛工場で働いてるっていう設定が自分のなかで先にあって、イカの塩辛の生産量が一番多かったのが、函館の次ぐらいに富山だったんですよ。だからロケ地も必然的に富山に。なぜイカの塩辛だったのかは、自分でもちょっとよく分からないんですけど(笑) 。

池ノ辺 そういう「イカの塩辛工場」みたいなキーワードが発生するのは、ひらめくというか、降ってくる感じですか?

荻上 今度あんなものが作りたい、こんなテーマをモチーフにして、っていうのが頭の中にずっとある状態なんです。今回でいえば、「夕暮れ時のさびしさに」っていう、たまの曲があって、これは知久(寿焼)さんが作詞してるんですが、夕暮れ時になると、つい口に出てきてしまう曲なんです。

ずっと好きだったんですが、あるとき、歌詞をちゃんと分かってないことに気付いて、Googleで調べてみたら、知久さんの歌詞が面白くて。夕暮れ時にお米を研ぐとか、夕暮れ時に牛乳を飲むとか、お坊さんが風船ガムをふくらませて飛んでいったとか、そんな歌詞なんです。それを見た瞬間に、頭にあったいろんなものがつながってお話になって出てきた感じが。

池ノ辺 慣れ親しんでいた歌の歌詞から、映画のイメージが生まれるってすごいですね。だから、たまの知久さんが出演しているんですね。

荻上 もう絶対に知久さんには出ていただこうと思っていました。

池ノ辺 歌詞から映画のイメージを発想して、そこから脚本を書いていったわけですね。執筆に時間はかかりましたか?

荻上 すごい勢いでバッと書けてしまって。それから大変な日々が(笑)。

池ノ辺 企画が通って、撮影にこぎつけるまでは、二転三転したんじゃないですか?

荻上 成立しかけたら、流れたり。なかなか作れなくて、3年ぐらいかかりました。最初に流れてしまった時は、あまりにも悔しくて、もう3日ぐらい眠れないぐらい悔しくて、悔しくて。それで4日目に小説を書き始めたんです。あまりの悔しさに。

池ノ辺 すごい!それはオリジナル企画で実現できないなら、原作を自分で用意してやる!ってことですか?

荻上 そうなんです。原作があれば作らせてもらえるんじゃないかと思って。