おとぎ話みたいな世界を描くための方法とは?
池ノ辺 そうやって信頼と関係を作り上げてから撮影されただけあって、観ている私もトリュフ・ハンターのおじいさんたちと一緒に森を歩いているような気分に何回もなりました。
グレゴリー それは彼らを知るということだけでなく、僕たちが彼らの世界を感じたり、匂ったり、あるいは味わったりすることが、十分できてから撮影し始めたからだと思います。つまり、自分たちがそこで発見したもの、感じたもの、そして、ここで生きることという経験がどんなものなのかというものを理解した上で映画を作っていきました。
池ノ辺 おじいさんたちがみんなで喋っているところに、白トリュフを探す一匹の犬が穴を掘り始める場面も、その場に居合わせているみたいで、いろんな音が聞こえてきました。
マイケル 皆さんに没入してもらうために、音は非常に重要な部分でした。かなり時間をかけて収録もしています。米粒サイズの小さなマイクを犬の鼻の近くに付けたりとか、人間に付けたりして、彼らの世界で響くすべての音を録っています。
池ノ辺 そこまで“音”にこだわるのは、映画にとって音響が重要な存在だからですね?
マイケル 映画の半分は音なんじゃないかと思っています。もう半分は美しい絵画のような映像ではないかと僕たちは考えています。
池ノ辺 それで、こんなに映像が美しくて、印象的に音が聴こえてくるんですね。
マイケル さっき、指摘いただいたシーンも、よく聴いていただくと、木から葉っぱが落ちる音も入っているんですよ。
池ノ辺 犬がお宝のトリュフを見つけるところを観ていて思い出したんですが、日本には昔話で、“ここほれワンワン”ってあるんですよ。犬が掘っていくと宝物が出てくるという昔話なんですが、この映画もそういう昔から伝わるおとぎ話を観ているかのようでした。
グレゴリー まさに僕たちが、この場所で見聞きしたすべてが、おとぎ話のようでした。
池ノ辺 白トリュフも、それを探し出すトリュフ・ハンターたちの存在も、おとぎ話の世界のようですね。
グレゴリー 白トリュフにはマジカルなものを感じました。養殖できるものではないし、いにしえの知識が必要で、そして犬と人間の素晴らしい関係性なくしては森の中で見つけることができない。
池ノ辺 本当におとぎ話みたい。
グレゴリー 彼らの能力と、犬とのやり取りを目撃すると、本当に魔術のようなんですよね。こんなおとぎ話に出てくるマジカルな世界を、映画で伝えたいと考えていました。