Oct 28, 2021 interview

原作者 瀬尾まいこが語る “ 心地良くて愛情をたくさん与えられた気持ちになった ” 映画『そして、バトンは渡された』

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小説で誰かを楽しくできたら嬉しい

池ノ辺 『そして、バトンは渡された』は、血の繋がらない父と娘、血の繋がらない母と娘を描いていますが、血の繋がらない家族っていうのは、まいこ先生が学校で生徒さんたちと一緒に、家族みたいに過ごした時間が反映されているんですね?

瀬尾 そうですね。家族みたいになれていたかどうかは分かりませんが、私には今、娘がいるんですけど、娘に対する愛情と、自分が担任していた生徒に対する愛情はほぼ同じなので、血の繋がりって子どもを思う気持ちに関しては関係ないかなと思います。

池ノ辺 私は映画に出てくる2つの家族を見ながら、血の通わない家族でも、こんな感じになるのかな? って思う部分が実はあったんです。それで、私にとって、血の繋がらない家族に当たるものって何だろうって考えると、私は社員が30人ぐらいいる会社の代表なので、その30人が悲しいとか、苦しいとか、辛いとか、泣きたいよ〜っていう気持ちになるのは、それは私も絶対に嫌だ !! って、すごく思っているんですね。ひょっとしたら、その感覚が近いのかなって思ったんですよ。

瀬尾 すごくわかります。同じ空間にいる、ましてや同じ会社にいる人が悲しいのとか耐えられないですよね。

池ノ辺 そうなんです。ずっと一緒に仕事をしながら生きているので、やっぱり家族を大切にしたいと思うのと同じ気持ちを持つんですね。これが家族だって思いました。

ところで、これから書く小説は、どんなものを書いていこうと考えられているんですか?

瀬尾 書くときに、“これを書きたい。これを伝えるんだ”っていう強い意識はそんなになくて、やっぱり読んだ人に笑ってもらいたいなと思っています。本って高いし、読むのに時間かかるじゃないですか。なので、ちょっとでも笑ってもらえたら嬉しいなと。それだけです。小説家になりたかったわけじゃなくて、ずっと教師になりたかったので、学校で若い人たちが明日を楽しみにしてくれるようにしたいなと目標を持って歩んできたのに学校を辞めてしまったんですけれど。でも、小説を書く機会をいただいているので、まわりまわって誰かを楽しくできているんだったら嬉しいし、そういうことができる機会がせっかくあるのだから、しっかり取り組んでいかねばと思っています。

池ノ辺 教え子だったみなさんは、『そして、バトンは渡された』が映画になることについて、何か言ってます?

瀬尾 たくさんLINEをもらいました。すごい人がいっぱい出てるって言ってました(笑)。

池ノ辺 そうすると、もうみなさん大きくなっているでしょうから、今度は森宮さんの気持ちになって見る人たちもいるでしょうね。『そして、バトンは渡された』は、原作も映画も、年齢を重ねて読み返したり、見返したりすると、また違った感情を持つことができる素晴らしい作品だと思うので、永く楽しんでほしいですね。まいこ先生の次の作品がまた映画になることを楽しみにしてます。

瀬尾 そのときは、またその映画の予告編を観るのを楽しみにしています。

池ノ辺 ありがとうございます。それでは最後に、この映画をこれからご覧になる方に一言いただいていいですか?

瀬尾 すごく泣ける気持ちいい映画だと思いましたが、それだけじゃなくて、出てくる梨花さんだったり、森宮さんだったり、梨花さん、水戸さん、泉ヶ原さんたち出てくる親たちの愛情が、映画を観ていると、その方々の愛情に直接触れているようで、すごく心地良くて、愛情をたくさん与えられた気持ちになると思いました。泣いて心地良い気持ちになっていただけたらなと思います。

インタビュー / 池ノ辺直子
構成・文 / 吉田伊知郎

プロフィール
原作者 瀬尾まいこが語る “ 心地良くて愛情をたくさん与えられた気持ちになった ” 映画『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこ (せお まいこ)

小説家

1974(昭和49)年、大阪府生まれ。
大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本「卵の緒」でデビュー。05年、「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞を、09年、「戸村飯店 青春100連発」で坪田譲治文学賞を、19年、「そして、バトンは渡された」で本屋大賞を受賞。他の著書に「天国はまだ遠く」「優しい音楽」「強運の持ち主」「温室デイズ」「見えない誰かと」「ありがとう、さようなら」「僕の明日を照らして」「おしまいのデート」「僕らのごはんは明日で待ってる」「あと少し、もう少し」「春、戻る」「傑作はまだ」などがある。

作品情報
原作者 瀬尾まいこが語る “ 心地良くて愛情をたくさん与えられた気持ちになった ” 映画『そして、バトンは渡された』
映画『そして、バトンは渡された』

血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子。わけあって料理上手な義理の父親、森宮さんと二人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと恋のこと友達のこと、うまくいかないことばかり。一方、夫を何度も変えて自由奔放に生きる魔性の女・梨花。泣き虫な娘のみぃたんには愛情を注ぎ、共に暮らしていたのだが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまう。そして、森宮さんもまた優子に隠していた秘密があった。優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、やがて、全く違う2つの物語が交差するとき、驚きとともに、今年最大の感動が訪れる。

監督:前田哲

原作:瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」(文藝春秋 刊)

出演:永野芽郁、田中圭、岡田健史、稲垣来泉、朝比奈彩、安藤裕子、戸田菜穂、木野花 / 石原さとみ / 大森南朋、市村正親

配給:ワーナー・ブラザース映画

©2021 映画「そして、バトンは渡された」製作委員会

10月29日(金) 全国公開

公式サイト soshitebaton-movie

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池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。最新作は「フレンチ・ディズパッチ」。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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