Oct 28, 2021 interview

原作者 瀬尾まいこが語る “ 心地良くて愛情をたくさん与えられた気持ちになった ” 映画『そして、バトンは渡された』

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教師になって生徒からもらったキラキラした時間

池ノ辺 映画を観始めたら、途中で“秘密”ってこれなんじゃないかなと思っていたら、それが違ってびっくりしたりするうちに、すごく温かい気持ちになってくるんですよね。周りからもすすり泣きが聞こえてきて、その秘密がわかったあとには最後に大泣きする。先生も泣きました?

瀬尾 泣きました。それこそ卒業式で・・・。

池ノ辺 そこはバラしちゃいけない、きっと(笑)。やっぱり後半は私も泣きましたね。試写室では、男の人も結構、泣いてる人が多かったんですよ。

瀬尾 私は旦那と2人で観たんですけど、うちの旦那も泣いていました。

池ノ辺 私は、優子がピアノの伴奏をする卒業式のシーンで号泣したんですが、ああいった場面は、学校の先生をやっていた経験があったから書けるんですか?

瀬尾 小説の中ではピアノを弾くのは合唱祭なんですが、実際に自分が学校にいたから、合唱祭のピアノ伴奏のことがわかったし、卒業式の雰囲気もわかったのは、たしかに学校での経験があったからだと思います。私が働いていたのは中学校なんですけど、だから合唱祭の伴奏に当たるのが、完璧に上手い子じゃない場合があるんです。

池ノ辺 だけど練習していって、だんだん上手くなっていって、みんなで一体化して盛り上がるわけですね。

瀬尾 そうです。合唱祭は盛り上がりますね。本当にこんなドラマみたいなことが日常にあるんだと思うぐらい、ただ歌うだけなのに、みんな必死になって。

池ノ辺 小説を読んでいても、それがとてもリアルに感じて、卒業式のちょっとセンチになる気持ちを、私もちょっと思い出しちゃいました。そもそも、まいこ先生はどうして学校の先生になろうとしたんですか?

瀬尾 自分が子どものときはあまり学校が好きじゃなかったのですが、目立ってる子も、人前に出るのが苦手な子も、いろんな生徒が居心地のいい場所、クラスを作りたいなと思ったのが最初です。

池ノ辺 実際に学校で教えてどうでしたか?

瀬尾 15年働きましたが楽しかったです。自分が十代のときって、青春だと思えるような出来事はひとつもなかったですけど、教師になって子どもたちのおかげでキラキラした時間を与えてもらったと思っています。もちろん死ぬほど嫌なことも山ほどありましたけど、その何倍もたくさんの感動がありました。

池ノ辺 それがまいこ先生の小説に、いろんなところで散りばめられてるんですね。

瀬尾 そうですね。中学校で働いてなかったら小説を書いてないし、書けてないと思います。