Oct 07, 2021 interview

映画『ONODA 一万夜を越えて』 主演・津田寛治が守る、カメラの前で芝居をしてはいけないという教え

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付け髭と迷彩服で受けたオーディション

池ノ辺 オーディションを受けたそうですが、どんな形だったんですか?

津田 うちの事務所に来てくれて、そこでオーディションをやっていただいたんですが、監督に言いたいことがあったら言って下さいと言われたので、「僕なりに小野田さんを調べました。僕が演じるとしたら、こういう風に演じてみたい」というようなことを喋った記憶があります。このとき僕は仕事上、髭を生やすことができなかったので、付け髭をつけて、それから坊主頭に出来なかったからグリースで頭をべったりオールバックにして、それから迷彩柄のTシャツを着て行ったんです。

池ノ辺 外見を作っていったのね。でも、それちょっと不自然に見えなかった?

津田 もしかしたら、ちょっとおかしく見えたかもしれない。監督も「そんなにしてくれて、ありがとう。ただ、髭は外してもらっていいかな?」って(笑)。

池ノ辺 オーディションでは演技テストもするわけですよね?

津田 台本の抜粋をもらっていたんですが、フランスの監督の前で日本兵を演じるんだと思ったら、変にテンションが上がっちゃったんです。そうしたら監督が、「今度はもっと普段の津田さんで演ってください」って言うんです。「声量もそんなになくていいです。心のつぶやきなので、しゃべらなくてもいいですよ」と言われて、今度はそれを演ってみせたんですね。そうしたら、「面白い。津田さんと、いろいろ試したくなる。今は時間もないからここまでにしますから、結果を待っていてください。あと、坊主頭にできますか?」「もちろんです!」と言って別れたんです。

池ノ辺 そうやってオーディションを経て、小野田さん役に決まったわけですね。決まったときはどう思いました?

津田 鳥肌が立ちました。改めて脚本を読むと、今までとはちょっと違う日本兵が描かれているなと思ったんです。現代の普通の男が、ジャングルでずっと過ごす中で、どう思ったかという視点で描かれている。これを演るのなら、日本兵にも小野田さんにもなる必要もなく、自分自身で演ればいいんだなと思ったんです。