Sep 17, 2021 interview

[ 映画は愛よ ! 特別編 ] 「なら国際映画祭」エグゼクティブディレクター河瀨直美監督と語る、次世代の才能の発掘への想い

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自分たちにできるのは場をつくること、庭をつくるようなもの

ノ辺 今回ワークショップに参加した時に、彼らにプロの人と一緒に何かをする体験をさせてもらえたことが素晴らしかったと言われましたけど、これで喜んでもらえるならいくらでも伝えますよと私の方が思いました。本当に吸収も早いし、そういうふうに言える感性も素晴らしい。

今は、フライヤーを配ったり、いろんなところに自分たちで作ったリリースを送ったり電話したり、できることをギリギリまでやって、それが最終的に私たちが言うところの初日、今回は最終日の『いつか、どこかで』の上映会に、どれくらいのお客様が自分たちがつくったものを感じて見に来てくれるだろうかと。その結果がまさに一つの大きな学びですよね。

河瀨 そうなんです、ドキドキします(笑) 。

池ノ辺 毎日毎日、今日は何枚売れましたと数えて、「身内に頼ったら」なんていう案も出ていたりしているらしいですよ(笑)。

河瀨 今回は来てくれるお客さんが目に見えてわかるというのもすごいことですよね。当日に一つ一つの席に来られたお客さんが、自分たちがした宣伝によって足を運んでくださったのだという体験は彼らにとっては本当に忘れられない経験やつながりの時間になるのではないかと思います。

池ノ辺 こんなご時世ですけどね。

河瀨 それなんですが、私たちの業界は今、コロナで劇場に足を運べない、映画においては劇場、コンサートではライブハウスとか、そういったものが無観客になったり配信に頼るといった時ですけど、実際に足を運んでもらうためにどうすればいいか、どういう対策をすれば安全に開催できるのか、チャレンジするところまでが使命だなと私は思っています。もう一度コロナのない時代に戻ることはできないけれど、政府の指針を待って、ただ黙って指をくわえて素晴らしい映画を伝えることをしないというのではなく、こちらからアクションを起こしてどうやったらできるかを考えたいと思っています。今回のイベントも、近隣県は緊急事態宣言下ですけど何とか成功したいし、しかもそれがユースの力が導いてくれたとなれば、次につながると思うんです。

池ノ辺 そういうことでまた次が動くんですよね。私も会場には伺います。みんなにも会いたいですし、最終日の上映会の結果に立ち会えるのもすごく楽しみです。

河瀨 自分たちにできるのは場をつくること、庭をつくるようなもので、そこに植えられた種が芽吹いて、嵐もあるけれど元気に育って花を咲かせてほしい、命を輝かせてほしい、そう願っています。

池ノ辺 今日はありがとうございました。上映会のチケットはまだ購入できるそうですね。奈良でお会いできるのを楽しみにしています。

インタビュー / 池ノ辺直子
構成・文 / 佐々木尚絵

プロフィール
河瀨 直美(かわせ なおみ)

映画作家

生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリー、フィクションの域を超えカンヌ映画祭をはじめ、 国内外で高い評価を受ける。監督代表作は『萌の朱雀』『殯の森』『2つ目の窓』『あん』『光』『朝が来る』など。 D J 、執筆、出演、プロデューサーなど表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。 東京2020オリンピック公式映画監督、2025年大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー(シニアアドバイザー兼務)、 バスケットボール女子日本リーグ会長。プライベートでは野菜やお米をつくる一児の母。 

作品情報
映画『いつか、どこかで』

アデラは、愛する人との思い出の品物を展示する《別れの博物館》を訪れるため、クロアチアへ向かう。そこには彼女が寄贈した、亡くなった彼氏の残した携帯電話が展示されている。その後、インスタグラムで知り合ったセルビア人のアレックスに会うためにセルビアの首都ベオグラードへ。ところがアレックスは姿を見せない。カタリナが語った1999年におこったボスニア戦争の話から、アデラにはマカオが中国に返還された1999年の、9歳の時の記憶が蘇る。美しい地モンテネグロで、アデラとカタリナは一夜を共にする。その後、ようやく現れたアレックスからは予想もしなかった結末を知らされるのだが、彼女はバルカン半島の旅を続けていく。

プロデューサー・監督・脚本・撮影・編集:リム・カーワイ

出演:アデラ・ソー、カタリナ・ニンコヴ, ピーター・シリカ、ホスニー・チャーニー、マティ・ミロサヴリェヴィッチ

配給:cinema drifters

© cinema drifters, 2020

2021年9月20日(祝・月)に東大寺総合文化センター金鐘ホールで上映

上映チケットの購入はこちらから [Ticket]

公式サイト somewhensomewhere.themedia.jp/

開催概要
『なら国際映画祭 for Youth 2021』

奈良の平城遷都1300年目となる2010年から、映画作家の河瀨直美をエグゼクティブディレクターに迎え、2年に1回開催されている国際映画祭。国内外の若手監督と奈良を舞台とした映画制作や、子ども・海外学生とのワークショップ、奈良市内を移動する映画館「ならシネマテーク」など、映画の魅力を伝える数々のプロジェクトを実施。次世代を担う子どもたちのプロジェクトの充実を図り、若き才能あふれる芸術の力で、世界を再び繋げていけるように映画の魅力を発信していく。

主催:NPO 法人なら国際映画祭

会場:東大寺 総合文化センター金鐘ホール、春日大社

料金:前売券:(一般・学生)1000 円,当日券:(一般)1500 円・(学生)1000 円

2021年9月18日(土)〜9月20日(祝・月)

公式サイト nara-iff.jp

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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