Jun 07, 2020 interview

モノクロバージョンが描く異世界。宣伝プロデューサー 星安寿沙が語るアカデミー賞4冠受賞作『パラサイト』

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ネタバレせずに口コミを広げるためには?

――星さんは『パラサイト』をどのタイミングで見たんですか?

カンヌ映画祭で公式上映するリュミエールっていう大きな会場で上映したときに初めて見ました。その夜、興奮して眠れないぐらい面白かったですね。それに会場では、言葉も人種も違う人たちがスタンディングオベーションで盛り上がったりしていて、熱気がすごかったです。

――カンヌの反応で、これは日本でも行けると思ったわけですね?

そうですね。これは、ちゃんと宣伝をすれば広がっていくタイプの映画だと思ったので、これは見なければいけない作品だと思わせるような展開をしないといけないなと感じました。

――日本で宣伝を行っていく上で、他の映画の宣伝とは違うことはやったんですか?

今回は通常よりもマスコミ試写の回数を多く設定していたのですが、マスコミ試写の前に内覧試写をかなりの回数行いました。そこに日本の監督さんや俳優さんに来ていただいたのですが、みなさんすごく絶賛してくださって、業界内に口コミで広げていただいたんです。

――ただ、この映画はネタバレがあるので、あまり詳しくしゃべれないんですよね。口コミを期待しつつネタバレにならないようにするのって宣伝としては難しくないですか?

悩みましたが、「見ないと伝えられないから、早く見てよ」という口コミを期待し、ネタバレ厳禁を全面に打ち出した宣伝展開をすることにしました。

――マスコミ試写もすごい盛況でしたね。

毎回50名ぐらいお入りいただけないほどでした。そういう現象になる事自体があまりなかったので、これは良い流れが来てるんじゃないかなっていうのは感じていましたね。

――年明けに一般公開されると、観客のみなさんからの反応も大きかったでしょう?

先行公開では、監督とキャストが「ネタバレしないでくださいね」と語る映像を付けていたんですが、その効果で「言えないけど、とにかく見て」とか「すごいヤバいもの見ちゃった」というようなわかりやすい口コミが広がりました。全国公開後はポン・ジュノ監督の作品は細部のこだわりが本当にすごいので「もう一回見たい」とか「これってこういう解釈だったんだ」みたいな作品の理解を深堀りするような一般の方のレビューがどんどん増えていって、初見の人の数も多いのですが、回数を重ねて見てくださる方もすごい人数になっていると感じました。