Jun 07, 2020 interview

モノクロバージョンが描く異世界。宣伝プロデューサー 星安寿沙が語るアカデミー賞4冠受賞作『パラサイト』

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モノクロ版『パラサイト』が描く異世界

――そして、全国の劇場が再開される中で、『パラサイト 半地下の家族 モノクロVer.』が6月5日から公開されました。これは監督があえて色を無くして白黒映画にしたバージョンなんですよね?

ポン・ジュノ監督は、ヒッチコックなどの名匠を尊敬しているんですが、そうした監督たちはモノクロとカラーの映画を撮っているので、自分でもそれを実現させるのが夢だったと話しています。

――私はモノクロ版を予告でしか見ていないんですが、どうでしたか?

作品の濃度が凝縮されていると言うか、カラーじゃない分、見ている側の想像力がよりかきたてられるんです。暗闇はより暗くなっていますし、雨もすごく重く感じます。匂いも画面から沸き立ってくるような感じがしますし、モノクロになるだけで、1本の映画ってこんなに違って見えるんだっていう驚きがありました。

――それはカラー版と見比べてみたいですね。映画館が再開されて直ぐに公開されるわけですから、宣伝も今までと同じというわけにはいきませんよね。

公開日決定のリリースと一緒に出したビジュアルは、登場人物全員にマスクをつけているんです。

――そうそう、マスクしてた(笑)。つまり、映画館にはマスクをして行きましょうってことね。

密着気味の家族写真がメインビジュアルになっているので、その上に「適切な距離も保ちましょう」とソーシャルディスタンスを呼びかけるコピーを置きました。劇場さんはすごく対応を頑張っていただいているんですが、劇場に来場する側も気をつけないといけない状況だと思うので、そういう視点を宣伝で重くなりすぎない形でお伝えできたらなっていうのがあって、ああいったものになりました。

――あれを見て、映画の宣伝は時代やその時々の状況に敏感に反応しながら作っていかなきゃいけないんだなって思いましたね。

次回へつづく

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文 / 吉田伊知郎

プロフィール
星 安寿沙(ほし あずさ)

ビターズ・ エンド 宣伝プロデューサー

1988年生まれ。配給会社や映画館でのインターン・アルバイト、学生映画祭運営などを経て大学卒業後、通信キャリアへ入社。その後「映画と観客を繋げる仕事がしたい」と2013年、映画配給会社ビターズ・エンドに入社。宣伝パブリシストとして『牯嶺街少年殺人事件』、『チョコレートドーナツ』、『おみおくりの作法』、『恋人たち』など約30作品を担当。宣伝プロデューサーとしては『パラサイト 半地下の家族』のほか、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』、『ある少年の告白』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、『在りし日の歌』(公開中)などを手がける。

作品情報
『パラサイト 半地下の家族』

モノクロVer. 6月5日(金)公開
IMAX 6月12日(金)公開

全員失業中、“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行く。そして兄に続き、妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…。
この相反するふたつの家族の出会いは、次第に想像をはるかに超える物語へと加速していく――。
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
配給:ビターズ・エンド
ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
公式 HP:http://www.parasite-mv.jp/


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池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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