舞台挨拶の司会をはじめ、映画コメンテーターや、映画レビュー執筆でも大活躍の伊藤さとりさん。新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の余波は、映画と共に生きる伊藤さんの仕事にも大きな影響を及ぼしたといいます。映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』の池ノ辺直子も、代表を務める予告編制作会社バカ・ザ・バッカの運営を進める上で10年先を見越した決断を下したそうです。『映画は愛よ!』の特別編として、現状の問題も含め、今だからこそ話したいことを二人が語り合う特別企画。第4回は映画が描く家族と血縁をテーマに、意外な映画たちが結びついていきます。そして、対立的に語られることも多い配信と映画館の未来について、二人は今、どう考えているのでしょうか?
あたたかい涙がこみあげる『フェアウェル』
池ノ辺 今回も、映画館が再開されたら見られる近日公開の映画をお話していきたいと思います。まず、『フェアウェル』。
伊藤 『フェアウェル』は監督の実話ですね。ゴールデングローブ賞を取ったのに、アカデミー賞はノミネートされなくて、なんでやねん!ってなりましたけど。生まれは中国で、アメリカで育った中国系アメリカ人の女の子が主人公で、おばあちゃんが余命宣告を受けたことをきっかけに、家族で大芝居を打つわけです。おばあちゃん子だった主人公が、家族とは 、自分のルーツとは、に気づかされていくハートフルコメディ。余韻に浸れる人間愛のお話ですね。
池ノ辺 なるほどね。
伊藤 一応コメディのジャンルなんですけれども、映画はクスッ、クスッと笑えて、なんかもう胸のあたりから涙がこみ上げてくる感じ。あったかいんですよ。すっごくあったかい涙を流す。
池ノ辺 良いお話ね。
伊藤 そしてオークワフィナの演技は唯一無二ですよね。決して彼女は綺麗ではないじゃないですか。でも、彼女はラッパーをやっていて、音楽センスがある。音楽をやっている人たちって、役者さんにも向いてるってよく監督が言うんですよ。独特の個性があって、吸収力があるから。オークワフィナって本当にそうだなと思って。だってつい最近も『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019年)に出て、その前にも『クレイジー・リッチ!』(2018年)で、やっぱり少年っぽい役を(笑)。そして今度は『フェアウェル』で、すごく地味でフツーのそこら辺にいそうな女の子の役をやっているんだけれども、彼女の表情ひとつだったり、喋り方ひとつが、日本でいうと安藤サクラさんぽいのかな? 一瞬の表情がすごく可愛かったり、一瞬の表情がすごい面白いっていう。これからずっと注目すべき女優さん。
『フェアウェル』公式サイト:http://farewell-movie.com/