May 18, 2020 interview

池ノ辺直子と伊藤さとりが見た、映画と映画界の今 (4) / 新作映画『フェアウェル』『ルース・エドガー』『ランボー ラスト・ブラッド』

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配信と映画館の未来とは?

池ノ辺 ということで、家で配信で見られる映画だったり、映画館が再開されたら見られる映画について、4回にわたっていろんな話をしてきたんですけど、いかがでしたか?

伊藤 配信やDVDで映画を見ていると、ふと映画館が恋しくなるんですよ。初めて映画館に行った日のことって忘れられないんですよね。5歳のときだったかなー、初めて洋画を見て、当時は吹き替えなんてなかったから、字幕を読むことの大変さを覚えたわけですよね。だけど、字幕が読めるようになったときに、世界が開いたんですよ。それで英語を勉強したいと思ったんですよね。あの大スクリーンで物語に没入できるって、映画館でしか味わえないもの。今、家で映画を見ていても、やっぱり感動の度合いって明らかに違う。ちょっと地味な映画を見るとわかるんですよ。例えばさっきのデレク・シアンフランス監督で言ったら、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2013年)とかあるわけですよね。あれなんか映画館で見るのと、家で見るのでは全然違って、ちょっとそっぽを向いていると、話がわからなくなっちゃうわけです。でもこの映画体験は素晴らしい。

池ノ辺 集中してないとわからなくなるのね。

伊藤 アキ・カウリスマキの映画なんかも、そうなんですよ。あれ、普通の話じゃんなんて一瞬思っちゃったりする。だけど、映画館で見ると集中して見るから心の機微に気付かされて、見終わった後に自分自身と向き合うことになるんですよね。だから映画体験って映画館なんですよ。そのことを家の中にずっといる日々の中で改めて気付かされました。池ノ辺さんはどうです?

池ノ辺 私はね、ネット配信って全然否定しなくて、劇場で見られなかったものを見させてもらえたり、すごく感動した作品をもう一度自分なりに見てみようと思ったら、すぐに見ることができる。それに、やっぱりこういうことがなければ、見られなかった映画もいっぱいあるしね。そういう意味では、とってもいい機会だなっていうふうには思っているんですね。

伊藤 この人は昔、何に出てたっけ? って振り返って家で見られるっていうのは、すごく楽しみが広がりますよね。配信のTVシリーズやオリジナル作品のクオリティも高かったり 。

池ノ辺 ただやっぱり、大スクリーンに向けて作られたものを、同じ環境で見たいっていうのは、やっぱりあると思うのね。それに主人公の後ろで、なんか面白いのが見えたりするんですよね(笑)。今後、収束して劇場に行けるようになったときに、映画がどんなふうに私達の生活の中にあるのかっていうことは、ちょっと楽しみだなって思っています。ネット配信と映画館が上手く両立するような環境になって、これからも映画が作り続けられていってほしいですね。これからどんな映画が公開されるのか、楽しみにしたいと思います。

構成・文 / 吉田伊知郎

写真 / 吉田周平
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プロフィール
伊藤さとり(いとうさとり)

映画パーソナリティ

年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。

伊藤さとり公式HP:https://itosatori.net

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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