May 04, 2020 interview

池ノ辺直子と伊藤さとりが見た、映画と映画界の今

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変化する映画のカタチ、ミニシアターの危機

池ノ辺 ハリウッドは今、撮影してないし、日本もそうですよね?

伊藤 そう、ストップしているんです。だから、これから困りますよ。映画館が開いても作品がないからリバイバル上映ばかりになっちゃいますよね。

池ノ辺 今年の4月、5月に公開予定だったものが延びた場合は、もう劇場にはかからないの?

伊藤 4月、5月公開の作品は、今のところ夏から来年に上映されるようです。特にメジャー系の目玉作品は、年末から来年繰り越しという形が増えるんじゃないでしょうか。『ソニック・ザ・ムービー』や『ムーラン』は夏公開になるのか、ですね。『映画ドラえもん のび太の新恐竜』も8月に延期になりましたけどね。私はジェット・リーが好きなので、『ムーラン』をめちゃくちゃ楽しみにしてたんです。それで、もうこうなったらと思って、リー・リンチェイ(ジェット・リー)祭りにしようと思って、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』の見直しキャンペーンやろうと思ってるぐらい、残念で仕方ない。

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『ムーラン』(近日公開) 公式サイト: https://www.disney.co.jp/movie/mulan.html

池ノ辺 ということは、最初から夏に予定されていた大作もずれるっていう感じですね? でも、そうなると宣伝がいろいろあるでしょうから、さとりさん忙しくなるんじゃないの?

伊藤 それより私が懸念しているのは、ミニシアターなんですよ。シネコンは母体がしっかりしているので大丈夫だと思いますけど。ミニシアターの支配人とインタビューして思ったのは、閉めている間も劇場はお金がかかるんです。家賃、光熱費、人件費……結局、赤字になるわけですよね。コロナが終息した後に劇場がちゃんと開けられるのか。でも、彼らはみんな「開けられる」って言うんですよ。「絶対にミニシアターは大丈夫だと信じてます」って。その言葉を聞いたら泣けてしまって。だからこそ今、「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」みたいなものが映画人の間で生まれてはいます。絶対にミニシアターは存在しないといけないんです!けれど、そこで上映される作品が果たしてこの後、あるのか。今はまだ延期になった作品があるので良いんですが、その後ですよね。年末あたりに公開される予定だった面白い日本のインディーズ映画も作るのが止まっちゃってる。洋画の買付けもこの状況でどうするか。これについてどうするか製作陣も考えているでしょうが、ちょっとこれで映画館だけでなく映画界のやり方も変わっちゃう気がしますよね。。

池ノ辺 どう変わると思います?

伊藤 今、みんなネットで映画を見てるじゃないですか。じゃあ映画ってネットで見ても良いんだって思う人って、今までもいたけれど、それが増えてきちゃう。そうなったら、シネコンもそうなんだけれども、ミニシアターでも仕掛けを考えなきゃいけないと思うんですよ。今までみたいに、ただ映画を上映するだけでなく、もっとトークショーを増やしたり、ミニライブ付き上映みたいな趣向を凝らしたり、お祭り的なものに少しずつシフトするかもしれない。だから応援上映みたいなものが増えると思うんですよね。人と人が関わることの素晴らしさを共有する場所として、生まれ変わるんじゃないかなって気がしますよね。

池ノ辺 もともと映画館で映画を見るっていうのは、そういうことでしたもんね。

伊藤 お客さんが「来てよかった」「素敵な思い出になった」と思うようなプラスの喜びを味わってもらうために舞台挨拶っていうものも始まって、私の仕事が生まれてきたわけですよね。応援上映の司会をやり始めたときに、お客さん参加型のイベントがまた増えたなと思ったんですよ。だから、この後にはまた新しいカタチで、映画を共有するイベントが生まれる気がします。

池ノ辺  私もね、映画館に行く意味は絶対にあると思っているのよ。やっぱり映画を共有して泣いたり、笑ったり、そこに一緒の仲間がいると思えることはすごく大事だなと思っていたから。配信は否定しない。いつでもどこでも映画が見ることができるから。それはうれしいこと。でも、大きなスクリーンで見ると、いろんなものが見えるよ、体感できるよっていうことは言いたい。終息して、みんなでまた劇場へ行こうよってなったときは、そういうことを言っていきたいですね。

構成・文 / 吉田伊知郎

写真 / 吉田周平

池ノ辺直子と伊藤さとりが見た、映画と映画界の今 (2)
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プロフィール
伊藤さとり(いとうさとり)

映画パーソナリティ

年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。

伊藤さとり公式HP:https://itosatori.net

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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