- 池ノ辺
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そうそう。
星野さんはパラマウントを辞めた後、デジタルメディアの宣伝展開を提案するデジタルマーケターとして新出発されているんですけど、その星野さんとカルチャヴィルの中村さんが、「とにかく池ノ辺さん、この人に会わないとダメよ!」と強烈に推薦されたのが西澤さんだったんです。
前振りが長くなっちゃった。
- 西澤
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なるほど。
それで今回、僕に声がかかったんですか。
- 池ノ辺
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というのも、そもそも『スウィート17モンスター』を日本で配給してよって中村さんにお願いしたのが西澤さんだったと聞きましたが。
- 西澤
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僕がこの映画を最初に見たのが去年のトロント映画祭なんです。
でも、この作品、ワールドワイドの配給権はソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントだったんです。
そうなると、日本から映画祭に参加した買い付け担当の人やバイヤーの方ってうちは関係ないって試写に行かないんですよね。
でも、ぼくは劇場でかける作品を選ぶ役目もあるので、ワールドワイドがついていても基本、見るんです。
映画祭って硬い題材の作品が並ぶから、続けて観ている間にちょっと疲れてくる。
それで、「ちょっとどうかな」と気分直しに見に行ったんだけど、トロント映画祭って、カンヌと違って、一般の観客も映画祭に参加して、見ることのできる映画祭なんですね。
- 池ノ辺
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『スウィート17モンスター』の観客の反応はどうだったんですか?
- 西澤
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いやもう、すごかった。
お客さんのテンションが異常に高い、高い(笑)。
- 池ノ辺
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わかるなあ。
ヘイリー・スタインフェルドちゃんが演じる女子高生のあの思春期のこじらせようが痛くて、可愛くて。
- 西澤
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ヘイリー演じる主人公の女の子の気持ちの描かれ方がもちろん、いいんですけど、僕も年なので、見ているうちに、ウディ・ハレルソンが演じる先生の方にどっぷり感情移入しちゃって。
ヘイリーがいろいろ困った相談事をしてくるんですけど、それにこたえるハレルソンの対応っぷりを見ていたら、「俺も部下にこういう風に教えたらいいんじゃないか」などと勇気づけられ(笑)、日本でもいろんな方向からお客さんに見てもらえる映画だなと思ったんです。
で、見終わった瞬間には、「どうしてもこの映画を日本に持ち帰りたい」と盛り上がっちゃって、その熱い思いを誰かにぶつけなければと。
- 池ノ辺
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なるほど。
- 西澤
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どこもかしこも硬派な人間ドラマと戦争映画だったので、新鮮だったのもある。
でも、こういう青春映画って今、日本のマーケットに持ってくるのはすごい難しいんですよ。
- 池ノ辺
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難しいですよね、要するに売れないということですよね。
- 西澤
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そう、普通の宣伝では売れない。
で、ソニーさんにアタックをかけても、ソニーさんは日本では上映しない、ビデオスルー(劇場未公開)だという。
で、日本配給がいろんなところを巡り巡ってカルチャヴィルの中村さんのところに来たから、「どうしてもテアトルの映画館でかけたいから、一緒に組んでやろう」とすごいお願いをしました。
- 池ノ辺
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中村さん曰く、ちょうど『嘆きの王冠』の宣伝を西澤さんと一緒にやっていたときで、西澤さんと話しているうちに、「これは私がヤらなきゃ」と思ったと。