- 池ノ辺
-
そうすると対立とか起きるんじゃないですか?
- 谷島
-
でもやっぱり、監督とは対等な立場でありたいわけです、特に宣伝の時は。
作ったのはあなたです、お客さんに届けるのは僕ですという意識があるから。
そのためには監督を知り尽くして勉強しなければならない。
一番大変だったのは『雨あがる』という映画をやった時。
あれは山本周五郎の原作じゃないですか。
そうすると原作以外にも山本周五郎を読み、熟知しないと小泉(堯史)監督と話せない、対抗できないよね。
- 池ノ辺
-
『明日への遺言』もそうですよね。
予告編を作りました。
もう観られないとおもうからと、 CGじゃない撮影の舞台セットも見に行きました。
- 谷島
-
あれは原(正人)さんのアシスタントをやったんです。
原さんがよくいう言葉が“with loving care”作り手に愛をもって接しましょうと。
- 池ノ辺
-
かっこいいね。
- 谷島
-
僕はやっぱり、出来上がった映画とか買ってきた映画を、自分のフィルターを通して観客に届けたいと思っているんですね。
フィルターを通した結果、そのまま渡すものもあれば、ものすごく曲解して渡すものもある。
それは多くのお客さんに見せるための自分なりの工夫なんです。
- 池ノ辺
-
原さんも、そういうスタイルですか?
- 谷島
-
例えば『リング』は、原さんとは無縁のホラー映画じゃないですか?
原さんもやり難い、むしろやりたくなかったんじゃないかと最初思ったんです。
- 池ノ辺
-
そうですね。
- 谷島
-
「原さん、なんで『リング』を作ろうと思ったんですか?」と訊くと、「これこそ親の深層心理を追求できるんだ」と。
自分の子供を救うために、悪魔に魂を売り渡してもいいという母親の話なんだと僕に言ったんですよ。
- 池ノ辺
-
なるほど。確かにそうですね。
- 谷島
-
自分の子どもが7日間で死ぬビデオを見ちゃった。
そのビデオを他の人に見せれば助かるわけですよ。
次の人はまた別の人に見せないと7日間で死ぬ。
そうやってリングウィルスは、ビデオを媒介にして、人間の弱みを餌に、世界へ広まる。
じゃあ、子供を見殺しにして呪いを断ち切れればいいのかという究極の選択を強いられるのが、あの映画の松嶋菜々子なんです。
そこがこの映画に込めた思いなんだということを語られて、なるほどなあと感動したわけ。
自分が企画しなくとも、与えられた映画のテーマやコンセプトを、凄い勢いで自分に引き付けるんですよ、宣伝もプロデューサーも。
- 池ノ辺
-
面白い。
奥が深い。
だから映画になるわけだけど。
谷島さんはプロデューサーだから、色々企画して映画を作ってますけど、3Dをはじめ新しいことにも挑戦していますよね