- 池ノ辺
-
その時は、何か買ってきたんですか?
- 谷島
-
「これは多分当たると思いますよ」と言ったのが、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダの『コルチャック先生』。
ユダヤ人たちを救ったお医者さんがいて、『シンドラーのリスト』にも出てくる人なんですけど、なかなか感動的な話なんです。
それで僕だけの推薦じゃなく、上映する劇場とも協議して、ヘラルド・エースはこの映画を買ったんです。
- 池ノ辺
-
あの頃って、ヘラルド映画とヘラルド・エースは別なものですよね?
- 谷島
-
別なものでした。
- 池ノ辺
-
エースは単館系の良質な作品をやって、ヘラルド映画はメジャーという印象でした。
私はヘラルドの『ブレイクダンス』からずっとやらせてもらっています。
- 谷島
-
『氷の微笑』とか『愛人/ラマン』をやっていませんでした?
- 池ノ辺
-
『愛人/ラマン』は私じゃないけど、『氷の微笑』は尾畑(留美子)さんと一緒にやっていました。
今の尾畑さん、ご存知ですか?
- 谷島
-
造り酒屋でしょ?
- 池ノ辺
-
尾畑酒造の専務取締役で世界中を飛び回っていますよ。
元々尾畑さんはヘラルド映画で宣伝プロデューサーを10年くらいやっていたんです。
それで実家が佐渡の造り酒屋さんだったので、継がなければいけないから帰るということになって。
現在はエールフランスのビジネスとファーストにもお酒を出しているんですよ。
- 谷島
-
そんなに。
それはもう安泰だね。
- 池ノ辺
-
その尾畑さんとは、未だにお酒のお付き合いをさせていただいているんです。
谷島さんはお酒って飲まれましたっけ?
- 谷島
-
飲まないです。酒タバコ博打はやらないで……。
- 池ノ辺
-
映画一筋!
- 谷島
-
そうです。
その頃には僕はプロデューサーになりたかったから、原さんに「プロデューサーになりたいんです。映画を作らせてください」と言って弟子入りしたんですよ。
原さんには「プロデューサーは極端に言えば誰でもできるから、宣伝を学ばないとダメだ」と頭ごなしに言われた。
宣伝を操れるようになれば、プロデューサーも自ずとちゃんとできるようになるからと。
まあ、半分だまされたのかもしれないですけど(笑)、宣伝部に配属されて、そこから宣伝を17年間も、やらされるんです。