「人によってさまざまな捉え方が出来る、奥行きの深い映画」(錦戸)
──月末は何も聞かされずに転入者の受け入れ担当を命じられます。ところがそれが元受刑者だと後で知らされて驚きますが、お二人は受けてしまった案件の途中で「こんな仕事だったっけ?」と思ったことは今までありましたか?
錦戸 例えば、何も聞かされずに石を運んでいたら実はピラミッドを作っていたとかそういうことですよね?
木村 あははは(笑)!
錦戸 それはないですね(笑)。そもそも、石を運んでいる途中で「なんで石を運んでるんやろ?」って疑問を持つはずですし、目的がわからないとどこに向かえばいいのかわからないですよね。僕は受ける前にちゃんと仕事の内容を確認しますし、今までもそうしてきたと思います。でも、もしかしたらピラミッドを作っていたはずが最終的にスフィンクスを作ってた、ぐらいのことだったらあったかもしれません(笑)。
木村 確かにそういうことはよくありますよね(笑)。私は今のような状況に至るまでに少し時間がかかったので、以前はお仕事をお受けする前から文句を言ってはいけないとどこかで思っていました。でも、今だったら「これ、絶対にピラミッドじゃないものを作ってる!」って途中で気付いても、ちゃんとスフィンクスを完成させてから、後で「スフィンクスを作るなんて聞いてないですよ」とマネージャーさんに言ってしまうと思います(笑)。
錦戸 なぜかピラミッドを作る話になってしまいましたけど、みなさん仕事を受ける時には事前に内容を確認するようにしてくださいね(笑)。
──では最後に、代表して錦戸さんに、今作の見どころを教えてください。
錦戸 サスペンスの要素がたっぷり入った作品なので、2時間シンプルにハラハラしていただけたら嬉しいです。その後に残る感情をどう消化していくかは、観てくださった方それぞれでしょうし。人によってさまざまな捉え方が出来る、奥行きの深い映画なんじゃないかなと。これから日本では、魚深市のような町が現実に増えていくかもしれません。正解がわからないまま誰かを信じ、裏切られ、それでも折り合いを付けなきゃいけない状況も、もしかしたら出てくるかもしれない。「もしそれが自分だったとしたら…」と、観る方の心をノックしてくれる映画になっていると思います。
取材・文/奥村百恵
撮影/中村彰男
錦戸亮(にしきど・りょう)
1984年生まれ、大阪府出身。2004年に関ジャニ∞のメンバーとしてCDデビュー。俳優としても「てるてる家族」、「ラスト・フレンズ」、「ウチの夫は仕事ができない」など数々の話題のドラマに出演し、『ちょんまげぷりん』では映画初出演にして初主演を果たす。その他の映画出演作品には『県庁おもてなし課』、『抱きしめたい-真実の物語-』などがある。現在放送中の大河ドラマ「西郷どん」に、隆盛の三弟・従道役で出演している。
木村文乃(きむら・ふみの)
1987年生まれ、東京都出身。2006年の映画『アダン』でヒロインデビュー。翌年の『風のダドゥ』では主役を務めた。近年の主な出演作は、映画『くちびるに歌を』、『ピースオブケイク』、『スキャナー記憶のカケラをよむ男』、『RANMARU神の舌を持つ男』、『追憶』、『火花』、『伊藤くん A to E』、ドラマ「神の舌を持つ男」、「A LIFE~愛しき人~」、「ボク、運命の人です。」などがある。現在放送中のドラマ「99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ」に出演中。
『羊の木』
さびれた港町・魚深の市役所に務める月末一(錦戸亮)は、転入者の男女6人の受け入れ担当を命じられる。一見普通にみえる彼らは、何かがおかしい。違和感を抱いた月末はやがて、上司から「彼らは全員、元殺人犯」という驚くべき事実を告げられる。それは受刑者を仮釈放させ、過疎化が進む町で受け入れるという国家の極秘プロジェクトだったのだ。ある日、港で発生した死亡事故をきっかけに月末の同級生・文(木村文乃)をも巻き込み、小さな町の日常の歯車は少しずつ狂い始める…。6人の元受刑者たちには北村一輝や優香、松田龍平など豪華キャストが集結し、人間の本性を炙り出す極限のヒューマン・サスペンス作品となっている。
原作:「羊の木」山上たつひこ、いがらしみきお(講談社イブニングKC刊)
監督:吉田大八
脚本:香川まさひと
出演:錦戸亮 木村文乃 北村一輝 優香 市川実日子 水澤紳吾 田中泯/松田龍平
配給:アスミック・エース
2018年2月3日(土)公開
©2018「羊の木」製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
公式サイト:http://hitsujinoki-movie.com/
https://www.youtube.com/watch?v=NBcBtl6rLmo&feature=youtu.be
「羊の木」山上たつひこ、いがらしみきお/講談社
「がきデカ」の山上たつひこ、「ぼのぼの」のいがらしみきおという日本ギャグマンガ界のレジェンドが原作と作画でタッグを組み、2011年に発表した漫画。過疎対策として仮釈放された元受刑者たちを受け入れた架空の町を舞台に、人間が抱える恐怖の深淵に迫った今作は話題となり、2014年(第18回)文化庁メディア芸術祭優秀賞に選ばれた