Jan 26, 2018 interview

『羊の木』錦戸亮×木村文乃が語る、強烈なマンガ原作の人物を演じるということ

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国家の極秘プロジェクトとして、仮釈放された元受刑者たちを受け入れる架空の町を舞台に、過去に罪を犯した“新住民”と市民とのせめぎあいを描いた「羊の木」。山上たつひこといがらしみきおがタッグを組んだ同名マンガを吉田大八監督が実写化した今作で、さびれた港町・魚深の市役所に務め、元受刑者たちの受け入れ担当を任される月末一を演じた錦戸亮と、月末の同級生で都会から地元に戻ってきた石田文を演じた木村文乃に、原作についての感想や今作を通して気付いたことなどを語ってもらった。

 

演じる上で難しかったのは「感情の余白の持たせ方」(錦戸)、「台詞にない部分」(木村)

 

──まず原作について伺いたいのですが、錦戸さんはたまたま今作のオファーが来る前に読まれていたそうですね。どういうきっかけで「羊の木」を読もうと思われたのでしょうか?

錦戸亮 ある日、“漫画 面白い”とネットで検索したらいろんな作品が出てきて、その中で読んだことがなくて気になったのが「羊の木」でした。タブレットで電子版を買って、一気に全5巻を読んだんですけど、当時はまさかこの漫画の映画化の出演オファーをいただけるなんて夢にも思ってなかったです。「強烈な漫画やなぁ」と思った記憶があるので、映画化されると聞いてどんな作品になるのかすごく興味が沸きましたし、すごい巡り合わせもあるものだなと感じました。

木村文乃 私はお話をいただいてから原作を読んだんですけど、錦戸さんと同様にこの漫画をどうやって映像化するんだろうと興味が沸いてワクワクしました。ですが、オファーをいただいて嬉しかったのと同時に、少し恐怖でもあったんです。というのも、私が演じた文は映画のみのオリジナルキャラクターで、原作に登場する二人分の役割を担っていたので、プレッシャーに感じてしまって。でも、台本を読んだら原作とテイストが全く違っていたので、吉田大八監督の指示に従って演じていこうと覚悟を決めました。

 

 

錦戸 原作では月末は中年のオジサンで、奥さんと娘がいて、髪の毛もかなり薄くなってきてるんです(笑)。月末だけじゃなく彼を取り巻くキャラクターたちの設定も、映画では大胆に変更されていて、原作との違いを見つけながら脚本を読むのはとても楽しかったです。変更された部分もありつつ、原作の持つ世界観の魅力はそのまま受け継がれていてすごいなと思いました。

──演じていて、難しいと感じたことがあれば教えていただけますか?

錦戸 月末は、強烈すぎるキャラクターが揃った物語の中ではほぼ唯一の“普通の人”なので、ある意味、観客の目線に一番近くて、感情移入もしやすいキャラじゃないかなと思います。難しかったのは、やはり松田龍平さんが演じた元受刑者の宮腰を月末が信じたり疑ったりする部分でしょうか。人を疑ったり信じたりするのはエネルギーをものすごく使いますし、自分を守るためには無関心になって人と関わらないのが一番良いのかもしれないですけど、そういうわけにはいかないこともありますよね。劇中で宮腰から「友達だよね?」と聞かれた月末は「友達」と返しますけど、それは宮腰のことを100%友達だと思って言ったかどうかは定かではないんです。そういった月末の感情の余白の持たせ方は演じる上で難しかったです。

木村 信じる、信じないで言うと、文は人を信じる基準が少し浅めの人で、そんな彼女が信じようとしてしまった相手が宮腰というのも面白いですよね。演じていて思ったのは、文はなぜ過去のことを宮腰本人に聞かなかったんだろうということ。きっと聞かなかったことを、文は相当葛藤したんじゃないかなと思います。そういった台詞にない部分を表情や仕草でどう伝えていくかという部分は演じていて難しかったです。