母親役・田中裕子との共演と刺激
──母親のこはるを演じた田中裕子さんとの撮影で印象に残ったことはありますか?
田中さんは台本通りに演じつつも、非常にオリジナリティ溢れる表現をされていたのが印象的でした。母親と大樹が二人で鍋をつつくシーンがありますが、その撮影時に「田中裕子さんと二人のシーンを撮れる日が来るぞ、と昔の自分に教えてあげたい」と心の中で思うぐらいミーハーな自分がいたんです(笑)。しかも親子役なので、15年の壁は感じつつも気を遣わなくてもいいお芝居ができたというか。とても贅沢で幸せな時間を過ごさせてもらったなと思います。
──家族4人で朝食を食べるシーンもありましたが、その時の現場の雰囲気はどのような感じだったのでしょうか?
朝食を食べるシーンは“それぞれがどういるか”がすごく重要な場面だったこともあり、田中さんは待ち時間も役を引きずってらっしゃいましたし、健と僕はひたすらスマホやタブレットを見て静かにしていて。そんな中で松岡さんだけは楽しそうにしていました(笑)。園子はそういうキャラクターでもありますからね。
──兄妹のみのシーンの撮影時も現場の雰囲気は同じでしたか?
いえ、僕と健と松岡さんの3人の時は雑談して盛り上がることも多かったです。だからといって田中さんがずっと役に入ってらっしゃるわけではなくて、母親としての気まずさや緊張感を大事にされていたのではないかと。なんとなくゆら~っと母親としての空気を漂わせている姿を見ていて刺激を受けましたし、自分もそういうことができる役者になっていきたいと思いました。
説明的な芝居は「削ぎ落としていきたい」
──この作品を経験したことで気付いたことは何かありましたか?
今回に限った話ではないのですが、最近僕の中でテーマにしているのが“余計な表現はしなくていい”ということなんです。しっかりと相手の役者さんのことを感じて、自分の中で感情が動いていれば、余計な表現というか、いわゆる説明的なお芝居はまったく必要ないので、どんどん削ぎ落としていきたいです。それは年齢を重ねていく中で求められるものが変わってきたことも関係していると思います。
──出演作を決める際はどんなことを大事にされていますか?
自分がワクワクするかどうかで決めています。監督や脚本家、役者の方など、誰とご一緒できるのか。もちろん作品の内容も大事です。心の底からお芝居が好きでおもしろいと思っているので、役者という仕事をずっと楽しいと思い続けていられるようなことに挑戦していきたいです。