白石監督の内側にある“強烈な反骨精神”
──ジャパンプレミアに登壇された際に、『日本で一番悪い奴ら』(16年)を観たあと綾野剛さんに「羨ましい、悔しい」と連絡されたとおっしゃっていましたが、念願だった白石監督とご一緒してみていかがでしたか?
白石監督は自分が提案したことを受け止めてくれる方で、撮影に入る前の段階で「この期間に吃音のトレーニングをしたいのですが」と伝えたらすぐに手配してくださいました。もちろん監督だけじゃなくスタッフの方々も協力的で。今回、世間のみなさまが僕に対して抱いているイメージとはまったく違う役柄で声をかけてくださったことも嬉しかったですね。リスクを取ってくれる方は正直あまり多くはありませんが、白石監督はあえてイメージとは違う役をいろんな役者さんにキャスティングし続けてこられていますし、それをおもしろがっているようにも見えます。素敵な方だなと思いました。
──白石監督自身の印象も変わりましたか?
白石作品を観ると「白石監督って怖い人なのかな?」と思うかもしれませんが、実際にお会いするとものすごく穏やかで良い方なんです。だけどその内側には強烈な反骨精神があって「何かをぶっ壊したい!」という不良性も感じるというか(笑)。そういった部分は作品からもビシバシと伝わってくるので、そこが白石監督の魅力だと思いますし、作品に発散させるからこそ良い人でいられるのではないかなとも思います(笑)。
──白石組を経験された役者さんはみなさん「熱量がすごかった」とおっしゃるので、穏やかだったというのは意外でした(笑)。
この作品のテイストもあると思いますが、僕自身も「白石組ってこんな平和に淡々と進むんだ」と現場で驚いて、完成作を観て「やっぱり白石作品だ!」と納得しましたから。雨が降っているだけのシーンなのに、なんか迫力があるんです(笑)。僕、思うんですけど、白石組の緊張感や熱量は役者が作り上げているのではないかと。例えば『狐狼の血』だったら「オラ~! やってやるぜ~!」という役者の空気が現場に渦巻いているだけで、白石さんが発しているものではないのかもしれないと思いました(笑)。その熱量を上手く作品に落とし込んでいるのかもしれませんね。
──お話を聞けば聞くほど白石監督への思いが伝わってきます。
白石監督の映画作りにかける思い、そして役者に愛を持って接している姿を見れば僕だけじゃなくみなさん熱く語ると思います。それは現場だけの話ではなく、例えば今回、次男の雄二を演じた(佐藤)健のメルマガに登録していたり、僕のファンイベントにお客さんとして参加してくださったりするんです(笑)。それに撮影に関わる誰もが納得して映画作りに挑めるように、準備の段階からしっかりとコミュニケーションを取ってらっしゃることも知っているので、本当に愛が深い方だと思います。