役者の基盤となっている70年代の名作&名優
――ありがとうございました。では最後にotocotoでは、ご自身のルーツになった作品や影響を受けた作品などを挙げていただいているので、吉田さんにもお願いできればと思います。
いっぱいあるんですが、僕がちょうど熱中して映画を観始めたのは、中学生くらいの1970年代、アメリカンニューシネマというジャンルが台頭している時代で。そのときに映画館に行ってお金を払って観た『明日に向って撃て!』(69年)や『狼たちの午後』(79年)、『ゴッドファーザー』(72年)も入るのかな――その当時の映画全般にものすごい影響を受けました。なんてすごい映画を撮るんだろう、なんて斬新なんだろうと。それまでのジョン・ウェインとかマーロン・ブランドが出てくるヒーローものやラブストーリーとは全く違う、もっとリアルで現実的な芝居や作風、ロバート・デ・ニーロとかアル・パチーノが見せた生々しい芝居が、自分が役者をやっていく上での基盤になっています。
――吉田さんは舞台からキャリアをスタートさせていらっしゃるので、舞台に影響を受けているのかと思っていました。
結局、舞台にもフィードバックできるんです。最初に舞台を観て影響を受けていたら、きっとダメだったと思うんです。上手くは言えないんだけど。舞台にもリアルな演技は絶対に必要なんですよ。良い声で朗々とセリフを言ってキレイな立ち姿でいてもお芝居は成立しないんです。
――映像と舞台の芝居は全然と違うとおっしゃる方もいますよね。
基本、舞台も映像も演技は同じです。大事なのは相手としゃべる、コミュニケーションを取るということ。そのコミュニケーションを取るときに、なるべく嘘をつきたくないわけですよ。でも嘘をついて、しゃべっているフリや聞いているフリをしてあたかも成立しているかのように芝居をする方が楽だったりするんですけど、それだとやっぱり気持ちが悪いんです。デ・ニーロとかアル・パチーノの演技を見ていると、やっぱり極力、本当の感情で演じようと嘘を排除しようとしている。それを今でも、お手本にしています。
取材・文/熊谷真由子
撮影/三橋優美子
スタイリスト/尾関寛子 ヘアメイク/吉田美幸
1959年生まれ、東京都出身。1997年に劇団「AUN」を結成し、自ら演出も手がける。蜷川幸雄演出の数々の舞台で主演を務め、2016年に「彩の国シェイクスピア・シリーズ」2代目芸術監督に就任。「おっさんずラブ」(18年)でお茶の間でも大ブレイク。近年の映画出演作に、『嘘を愛する女』『ラブ×ドック』『OVER DRIVE』(18年)など。今後の待機作に、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』(8月2日公開)、『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』(8月23日公開)、『カイジ ファイナルゲーム』(2020年1月10日公開)がある。
「この人が死んだ時、僕は泣いたりするんだろうか」──。子どもの頃から、何を考えているのか全く分からなかった父の背中を見て、心の中でそうつぶやくアキオ(坂口健太郎)。仕事一筋で単身赴任中だった父(吉田鋼太郎)が、会社を辞めて家に帰って来たのだ。一日中テレビを見ている父を、母と妹も遠巻きに眺めている。父の本音を知りたい、そんな願いに突き動かされたアキオは、ある計画を閃く。得意なオンラインゲーム『ファイナルファンタジーXIV』の世界に父を誘導し、自分は正体を隠して、共に冒険に出るのだ。その名も〈光のお父さん計画〉! アキオは顔も本名も知らないゲーム仲間たちに協力を呼び掛ける。だが、この時のアキオは思いもしなかった。父に家族も知らない意外な顔があるとは──。
原作:「一撃確殺SS日記」マイディー/「ファイナルファンタジーXIV」スクウェア・エニックス
監督:野口照夫
監督(エオルゼアパート):山本清史
脚本:吹原幸太
出演:坂口健太郎、吉田鋼太郎、佐久間由衣、山本舞香、前原滉、今泉佑唯、野々村はなの、和田正人、山田純大/佐藤隆太、財前直見
声の出演:南條愛乃、寿美菜子、悠木碧
配給:ギャガ
2019年6月21日(金)公開
©2019『劇場版 FF14 光のお父さん』製作委員会 ©マイディー/スクウェア・エニックス
公式サイト:https://gaga.ne.jp/hikarinootosan/
1960年代後半から70年代半ばにかけてアメリカで製作された作品で、若者を中心に、反体制的な価値観やロケーション中心主義などを特徴とした作品を指す。ベトナム戦争などの当時の社会背景から誕生したと言われている。代表的な作品に『俺たちに明日はない』(67年)、『卒業』(67年、『イージー・ライダー』(69年)、『明日に向かって撃て!』(69年)などがある。