レジェンド声優インタビュー 日髙のり子[少年ヒーロー編]
arranged by レジェンド声優プロジェクト
アニメ黄金期の立役者である「レジェンド声優」と、自らもレジェンドである声優・古川登志夫さん、平野文さんによる濃密トークをお送りするレジェンド声優インタビュー。2018年のトップバッターは、80年代に日本中の男子が「彼女にしたい!」と願った国民的ヒロイン・浅倉南を演じた日髙のり子さんです! ヒロインから少年役、お母さん役とマルチに活躍する日髙さん、そして百戦錬磨の大ベテラン・古川さんですら困惑したという“例の作品”についても語っていただきました!!
レジェンド音響監督・斯波重治さんとの思い出
- 平野文: (以下、平野)
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皆さんご存じの通り『タッチ』(1985年)は国民的ヒット作になったわけだけれど、ノン子は、それが終わった後のことは考えていた?
- 日髙のり子: (以下、日髙)
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実は全然考えてなくて(笑)。それどころか、南ちゃんがうまくいったので、自分は今、声優として良い感じになっているんじゃないのかと思い込んでいたんですよ。そうしたら、ある日、収録後の飲み会で、よその事務所のマネージャーさんたちから口々に「のり子ちゃん、これから大変だよ」って心配されまして……。そこでやっと自分の置かれている状況を理解しました。
- 古川登志夫: (以下、古川)
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強烈なイメージが付いちゃうと、ほかの役をやらせてもらえなくなっちゃうんだよね。
- 平野:
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でも、『タッチ』完結から半年後に、NHKの『アニメ三銃士』(1987年)のヒロイン・コンスタンス役に抜擢されているわよね(編集部注:平野さんも悪女・ミレディ役で出演)。
- 日髙:
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実はそこにも、忘れられないエピソードがあるんですよ。まだ『タッチ』がやっていた頃に、『アニメ三銃士』の音響監督である斯波重治さんにお会いする機会があったんです。そうしたら斯波さんに「あなたは上手だなって思うときと、下手だなって思うときの落差が激しいんだけど、なぜ?」って言われてしまったんです!
- 古川:
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厳しい!
- 日髙:
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確かに、スッとセリフが言えてスムースにキャラクターに入っていける時と、どんなにあがいてもスクリーンと自分の間に距離を感じてしまう時があるという自覚はありました。でも、そう斯波さんに言ったら「ま、いろいろ理由があるんでしょうけどね」って去って行ってしまって……。当時はそれがもう本当にショックでしたね。今後、自分が斯波さんに使っていただけることはないんだろうなって絶望していました。
- 平野:
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斯波さんは、演技にはとても厳しい方だから……(編集部注:平野さんも『うる星やつら』で斯波さんに見出され、育てられた才能の1人)。
- 日髙:
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そういった経緯もあったので、『アニメ三銃士』に起用していただいたのは本当にうれしかったんですよ。斯波さんの求める演技ができるかどうかは分からなかったんですが、この1年で何かを得て帰りたいって強く思いました。
- 平野:
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私はこの作品がノン子との初共演だったんだけど、なんて素直で、媚びのないさわやかなヒロインなんだろうって思ったし、そこにあなたの声がぴったりハマっていたと感じたわよ。
- 古川:
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文ちゃんはどういう経緯で出ることになったの?
- 平野:
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斯波さんからのご指名だったんです。でも、ミレディって、ミステリアスなとても大人っぽいキャラクターだったので、自分にはできないって最初はお断りしたんですよ。そんな声出したことないからできません、って。ところが、それに対する斯波さんのお返事は「いや、大丈夫です」で(笑)。そこまで言ってくださるのならチャレンジしてみようとお引き受けすることになりました。
- 古川:
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斯波さんってそういうところがあったよね。これはと思った役者さんの新境地を引き出すというか。それまでやっていなかったような役をやらせてくれるんだよ。僕も『うる星やつら』まではロボットアニメの主人公みたいな役ばかりやっていたんだけど、斯波さんのお声がけで、三枚目役をやらせてもらうことになったからね。
- 平野:
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だから、きっとノン子についても、南ちゃんの演技を聞いていて、何か感じるものがあったんでしょうね。私たち以外にもそんな風に斯波さんに育てていただいた人がたくさんいた人がたくさんいました。千葉繁さん(『うる星やつら』メガネ役など)、玄田哲章さん(『うる星やつら』レイ役など)……みんな、そうよね。
- 古川:
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とにかく“耳”の良い方だったからね。
- 日髙:
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その後も『となりのトトロ』(1988年)、『らんま1/2』(1989年)と、斯波さんの作品に継続してださせていただき、やったことのない役をやらせていただきました。もちろん、新しい役をやるたびに壁を感じるんですけど、それを乗り越えていくことで成長できたような気がしますね。