Mar 03, 2018 interview

『タッチ』浅倉南役・日髙のり子の声優道 アイドル歌手から国民的ヒロインへ

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平野

それじゃあ、収録も大変だったでしょう?(笑)

日髙

なんだかどんどん三ツ矢さんの印象が悪くなっていくので補足しておくと、スタジオでは、不思議なダンスを披露したり、現場の空気を良くしようとすごくがんばっていらっしゃったんですよ。むしろ、私がつたない演技で足を引っ張っていたわけで……。

古川

いやでも、雄二は女性には特に厳しいからなあ(笑)。

日髙

そんな私の心の支えになってくれたのが、キャッチャーの松平幸太郎くんを演じた「こぶちゃん」こと、林家こぶ平さん(現・林家正蔵師匠)。年齢が一緒で声優としてのキャリアも近く、しかも、それ以前に出演していた番組のプロデューサーが一緒という縁で何となくお互いの存在を知っていましたから、現場ではとても心強かったですね。お互い励まし合いながらがんばりました。

平野

それから『タッチ』は足かけ3年間続くわけだけれど、演じている間に気がついたこととか、感じたことはあった?

日髙

アニメの収録は週に1回でしたが、イベントやテレビ番組のゲスト出演、CMの収録などがあったので、何だかんだで、ほぼ毎日、南ちゃんを演じていました。そのうち、だんだん喋っているのが自分なのか、南ちゃんなのかわかんなくなってきちゃって……。あれは不思議な経験でしたね。

古川

それはあるよね。文ちゃんもラムと自分が一緒になっちゃったりしたんじゃない? 急にセクシーなビキニを着たくなったりとか(笑)。

平野

ビキニはないけど(笑)、言っていることはすごく分かります。

日髙

実は、それについても文さんの教えがあって……。何かの時に、文さんがラムちゃんというキャラクターのイメージを壊してはいけないから、普段の言動から気を使うようにしている、ファンの期待を裏切ってはいけないっておっしゃっていたんです。南を演じている時は、自分もそれを心がけるようにしていました。南ちゃんはパーフェクトなヒロインであることを期待されていますから、私がその声でおかしなことを言ったりしないようにしようって。

古川

そういえば、昔、日髙さんをスラップスティックの舞台に呼んだとき、僕が幕間寸劇の台本を書いたんだけど、その内容について雄二から直すように言われたことがあったのを思い出したよ。自分たちのことなら、どんな酷いネタでも受け入れてくれたんだけど、日髙さんの、南ちゃんのことについては品のないパロディのネタにしてほしくなかったみたい。

平野

台本を直させるってのはよっぽどのことよね。

古川

それだけ『タッチ』のことを大切に考えていたんだろうね。とにかく有無を言わせない感じだった。

日髙

えーーっ! それは初耳です。三ツ矢さんがそんなに大事に考えてくれたというのはうれしいですね。今日はこの話、大切に持って帰らせていただきます(笑)。

構成・文 / 山下達也 撮影 / 根田拓也

プロフィール

日髙のり子(ひだか のりこ)

東京生まれ。児童劇団を経てアイドルデビュー。タレント活動中に代表作でもある「タッチ」浅倉 南役でブレイク。現在アニメはもとよりナレーションNHK-BS「COOL JAPAN」・フジテレビ「ミライ☆モンスター」他、ラジオでは 文化放送「ノン子とのび太のアニメスクランブル」は長寿番組に、NHK人形劇「新 ざわざわ森のがんこちゃん」は20周年に。 出演作:「名探偵コナン」世良 真純 「PSYCHO-PASS」ドミネーター 「となりのトトロ」サツキ 他

2018年4月スタートのドラマ『声ガール!』(ABC・テレビ朝日) 出演!

https://www.asahi.co.jp/koegirl/

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古川登志夫(ふるかわとしお)

7月16日生まれ、栃木県出身。青二プロダクション所属。1970年代から活躍を続け、クールな二枚目から三枚目まで幅広い役を演じこなす。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(カイ・シデン役 1979~80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「うる星やつら」(諸星あたる役 1981~86年 フジテレビ)、映画・TV「ドラゴンボール」シリーズ(ピッコロ役 1986~ フジテレビ)、映画・OVA・TVシリーズ「機動警察パトレイバー」(篠原遊馬役 1989~90年 日本テレビ)、映画・TV「ONE PIECE」(ポートガス・D・エース役 1999年~)など多数ある。

hirano_profile

平野文(ひらのふみ)

1955年東京生まれ。子役から深夜放送『走れ!歌謡曲』のDJを経て、’82年テレビアニメ『うる星やつら』のラム役で声優デビュー。アニメや洋画の吹き替え、テレビ『平成教育委員会』の出題ナレーションやリポーター、ドキュメンタリー番組のナレーション等幅広く活躍。’89年築地魚河岸三代目の小川貢一と見合い結婚。著書『お見合い相手は魚河岸のプリンス』はドラマ『魚河岸のプリンセス』(NHK)の原作にも。