Sep 14, 2016 interview

芝居も一度「音楽」に翻訳するのが“ハマケン流”
映画『闇金ウシジマくんPart3』 浜野謙太インタビュー

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“まっさらな自分”なんて存在しないから
誰もが「常に演じてる」と思う

 

――そんなモチベーションがあったとは(笑)。音楽活動は高校時代からですよね。

はい、バンドをやり始めたきっかけは、完全にブルース・ブラザーズの映画を観て影響を受けてからですね。自由の森学園という高校で一緒だった星野源君と一緒にいろんなバンドで演奏していました。SAKEROCKは卒業してから始めたんですけど、星野君のバンドに呼ばれて演奏したり、別の友達のバンドに呼ばれて一緒に参加したり。それまで、才能って、自分の中に備わっているものというイメージがあったけど、そうじゃなくて、人との出会いや行動によって初めて生まれるもので、自分の外にあるものなんだなって思いました。僕の場合は映画を観たり、いくつかのバンドに参加させてもらったことで、才能っていうか、自分の中の可能性みたいなものが徐々に蓄積されたり、化学反応を起こしたんだなあって。「才能」って、自分の中にあるのか、外にあるのか、どちらが最初なのかは、それはコロンブスの卵と一緒じゃないのかなと思いました。……あれ? いや、コロンブスじゃないですね?(笑)

――卵が先か鶏が先か、ですかね?(笑)

それです(笑)。

――浜野さんの才能が、星野源さんや映画『ブルース・ブラザーズ』などに刺激を受けて引き出されたとすると、ほかのエンタメはどんなものに影響を受けましたか。音楽、舞台、本でも。

本は、森達也さんの『死刑』(角川文庫)です。ただ、僕、全然、本って読めないんですよ。妻からおすすめされた小説も1ページも読めなくて、、、。でも、森達也さんの本は「その視点、なかった!」って目からウロコだったんです。例えば『下山事件』(新潮社)もそうだし、『ドキュメンタリーは嘘をつく』(草思社)も面白かった。映画『FAKE』(監督:森達也、2016)はヤバかったですね。客観的に相手を取材しているという体なのに、最終的に森達也さん自身が取材対象者に深く関与していく。あれこそ、森達也さんの真骨頂ですよ。佐村河内さんだけじゃなく、誰だって、常に他人の目を意識していると思うんです。それなしでの、“まっさらな自分”なんて存在しないと思う。だから、誇張を恐れずに言えば、誰もが「常に演じている」。そこに確信犯的に斬り込んでいくスタンスが面白いですね。

――その視点は、今回の天生役にも活かされていたのでしょうか。ラストシーンは、テンションも最高潮になりますが、演技としてもハードルが高いシーンでしたよね。

本当に難しかったです。天生は常にビジネスとして、自分を演出して、カリスマ性を演じている人物だからこそ、あのシーンでは天生は「天生」を演じていたのかいないのか、素の「天生」を見せたのか演技だったのか、わからなくなりますよね。でも、演じている自分も、本当の自分のひとつだったりするじゃないですか。役者じゃなくても、誰だって、常に他人の目を意識しているから。それはミュージシャンも同じだと思うんです。音楽や演奏はもちろんだけど、その演出も含めてエンターテイメントなのかなと。

――では浜野さんの中では、ミュージシャンと俳優は、切っても切れないものですか?

そうですね、多かれ少なかれ、その要素はあると思います。だからその線引きを感じさせないくらい自然に演じられたらなって思うんです。最近すごいなあと思ったのは、ドラマでご一緒させていただいた、唐沢寿明さん。なんて言うか、もう、とにかくすごく自然なんスよねえ。なんかこう、「いつ役を入れてるのかなあ」と思ってしまうくらい。というか、「そもそも役を(自分の中に)入れてるのか、入れてないのか、どっちなんだろう?」と考えちゃうくらいなんですよ。プライベートでもお酒をご一緒させてもらったりしたんですけど、素はちゃきちゃきの江戸っ子という印象なんですけど、カメラが回ると、その江戸っ子とはかけ離れた“スーパー市役所員”になりきっている。でも、それだけじゃなくて、素の唐沢さんもちゃんと役に乗ってるところがすごい。それくらい、お芝居が自然なんです。役者ならあたりまえなのかもしれないけど、目の当たりで観て、びっくりしました。

――映画『FAKE』じゃないですが、どこまでが表現者で、どこまでが素の自分と言えるのか、考えさせられますね。

本人の素の部分と、役者として演じている部分の境界線があいまいなのがすごいし、演技っておもしろいなって。さっき、(映画『闇金ウシジマくん Part3』では)ラストシーンでは天生が演じているのか演じていないのかわからなくなると言いましたが、「演じている天生」という面からのお芝居のアプローチもあるし、「素の天生」というアプローチもある。演じることって、本当に奥深いなあと思いました。

――最後の質問です。今もし、天生のように、湯水のようにお金があったら、どんな散財をしたいですか?

自宅のほかに、もう一個、家を建てたいですね。そこに音楽スタジオをつくりたい。仕事もできるし、いろいろできるっていう別宅を(笑)。

――いろいろとは?(笑)

仕事場、そしてエトセトラです(笑)。いま子どもが3歳と2歳の年子なので、目下、自分の空間をどう作るかがテーマなんです。クリエイティブの作業の場所とか時間がほしいですね。あれ、これってなんだか、すっごく小さい話ですね(苦笑)。

 

取材・文 / otoCoto編集部
写真 / 田里弐裸衣

 


 

hamaken_prof

浜野謙太(HAMANO Kenta)
ミュージシャン・俳優

1981年、神奈川生まれ。ボーカル兼リーダーを務めるバンド「在日ファンク」などで活躍中のミュージシャンにとどまらず、俳優としても幅広く活躍。2006年の映画『ハチミツとクローバー』への出演をきっかけに、連続ドラマ小説『とと姉ちゃん』では、常子(高畑充希)たちが居候していた仕出し屋「森田屋」の板前・長谷川役を好演。そのほかドラマ『好きな人がいること』、『ディアスポリス』など出演多数。映画『闇金ウシジマくんPart3』では、カリスマ実業家・天生翔役を好演ならぬ怪演した。

 


 

(C)2016 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

(C)2016 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

(C)2016 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

(C)2016 真鍋昌平・小学館/映画「闇金ウシジマくん3」製作委員会

映画『闇金ウシジマくんPart3』

違法な高金利で金を貸す金融屋「カウカウファイナンス」の社長ウシジマを演じる山田孝之主演で、真鍋昌平の原作コミックを実写化した「闇金ウシジマくん」の映画シリーズ第3作。派遣の仕事で食いつなぐ沢村真司(本郷奏多)はある日、街で撮影中のタレントの麻生りな(白石麻衣)を見かけ、社会の格差を痛感させられる。ネット長者の天生翔(浜野謙太)が主宰する「誰でも稼げる」というセミナーに半信半疑で参加した真司は、人生の一発逆転を狙った億単位のマネーゲームに巻き込まれていくーー。

スタッフ
監督 山口雅俊
原作 真鍋昌平
脚本 福間正浩、山口雅俊
主題歌 Superfly『心の鎧』(ワーナーミュージック・ジャパン)
配給 東宝映像事業部=S・D・P

9/22(木)全国ロードショー

キャスト
山田孝之、綾野剛、本郷奏多、白石麻衣、筧美和子、最上もが、マキタスポーツ、藤森慎吾、浜野謙太、高橋メアリージュン、崎本大海、やべきょうすけ ほか

公式サイト
http://ymkn-ushijima-movie.com/movie3

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