Apr 14, 2018 interview

古谷徹がアムロを演じ続けて40周年! 今だから話せる『機動戦士ガンダム』秘話

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古谷

「ニュータイプ」について、かな。実はニュータイプについては、当初、全く何も言われていなかったんだけど、あるとき、アムロの額に稲妻が走るシーンを見つけてしまったんです。後ろからくる敵に気がついたりする時に稲妻が現れる。それで「これはなんですか?」って富野監督に聞いたら「あ、気がついちゃいましたか」って。そこで初めてアムロにニュータイプの素質があるということを教えてもらいました。

平野

さすが古谷さん、って?

古谷

じゃあ、そのことをどう表現しようと考えて……目をつぶってやってやろうと。後ろから来ている敵は見えないわけだから、それを疑似的に再現するのはその方法しかないって。フィルムを見ないで、直感だけで「そこか!」って。

平野

でも、それだと口パクに全く合わなくなっちゃいません?

古谷

それが、初めてやったときにピッタリ合った。もちろん、リハーサルはやっているので、だいたいの感覚はわかっているんですよ? でも、まさかピッタリ合うとは思っていなくて……2回目からは合わなくなっちゃったんですけどね(笑)。

古川

僕が今でもよく覚えているのは、マチルダさんっていう、アムロの初恋のキャラクターが死んでしまった後の別れのシーン(第24話『突撃!トリプル・ドム』)で、徹ちゃんが監督を待たせるっていうことがあったんだよ。気持ちを作るから少し時間をくださいって。

古谷

よく覚えてますねぇ(笑)。

古川

しかもそのとき、富野監督はカナダに行く飛行機に乗らないといけなくて、すごく急いでいたんだよ。僕の長い声優生活でも、富野監督を待たせたのは後にも先にも古谷徹だけですよ。

古谷

それは知らなかった! でも、後悔したくないでしょう? それに、その結果、良いものができるんなら許されると思う。その自信もあったしね。あの何度も繰り返す「マチルダさん」って叫びは、心の声なんですよ。

古川

しかもそのシーンでは、収録が始まる前からもう役に入り込んでいてね。嗚咽を漏らしながら、マイクの前に立って叫ぶんだよ。あれは本当に勉強になった。僕はそのとき、スタジオの外に出てないと行けなかったんだけど、無理を言って中にいさせてもらったんだ。その甲斐はあったね。

平野

まずは自分の中に役を憑依させて、その中から出てきた声じゃないとダメってことね。

古谷

そうですね。キャラが泣くときは自分も鼻水を垂らさなきゃ。それが僕のやり方。

平野

そうやって、収録した作品って、後で自分で見直したりする?

古谷

もちろん。そして、だいたい自分の芝居で泣くから。観客の気持ちになって「古谷徹すげーーーッ!!」って。ナルシストなのかもしれない(笑)。