Mar 11, 2017 interview

『機動戦士ガンダム』のキーパーソン 安彦良和と古川登志夫 “まさか”の出会いをふり返る

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レジェンドクリエイターインタビュー
安彦良和×古川登志夫
[めぐりあいガンダム編]

arranged by レジェンド声優プロジェクト

 

アニメ黄金期を作りあげてきた“巨匠”たちの物語を紐解くレジェンドクリエイターインタビュー。今回お招きしたのは、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインなどで知られる安彦良和さん。アニメ黄金期を牽引してきたカリスマクリエイターとして知られる安彦さんの“これまで”そして“これから”を、『機動戦士ガンダム』でカイ・シデン役を務めた声優・古川登志夫が聞き出します!

⇒[機動戦士ガンダム THE ORIGIN編]はこちら
⇒[安彦良和 THE ORIGIN編]はこちら

 

 

 

古川登志夫
(以下、古川):

本日インタビュアーを務めさせていただきます、声優の古川登志夫です。さて、今回は、漫画家の安彦良和先生をお迎えして、お話をうかがってまいりたいと思います。安彦先生、本日はどうぞよろしくお願いします。

安彦良和
(以下、安彦):

よろしくお願いいたします(笑)。

古川

この記事を読まれている皆さんは意外に思われるかもしれないんですが、実は僕が安彦先生とお話するのはこれが5回目。これまでそんなにお会いする機会がなかったものですから、今、ここでじっくりお話できているのが夢のようです。

安彦

実はそうなんですよね。

古川

そこで、今日、これを持ってきました。1982年の夏に行われた「第5回 アニメグランプリ」表彰式の時に描いていただいた色紙です。たまたま安彦先生と同じ楽屋になったので、小さい声で「サインをお願いできますでしょうか……」とお願いしたら、パーッと描いて下さったんですよね。しかも、自分がカイをやっている声優ですと言っていないのに、ちゃんとカイを描いてくださった。これは本当にうれしかったですね。

 

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安彦

「久しぶりなんでどうも……」なんて言い訳してるけど、あんまり似てないね(笑)。

古川

いやいやいや……これは我が家の家宝ですよ! 「サインをお願いできますでしょうか……」「いいですよ」「ありがとうございます」、これが私と安彦先生の一番最初の会話です。今でも忘れられませんね。

安彦

いやでも、僕ら裏方から見たら声優さんはスターですから、実際にはけっこう恐れ入っていたんですよ?

古川

役名も言っていないのにカイを描いて下さったのには感動しました。

安彦

お顔を見たのは初めてですけど、古川登志夫というお名前は当然知っていましたよ。だから、ああ、実物はこの人なのかって思いましたね。その次にお会いしたのはいつでしたっけ?

古川

その次は、TBSラジオでやっていた「アニメシティ」という番組にゲストでお越しいただいた時ですね。そのときもものすごく緊張していて、「安彦良和」ってきちんと言えるかどうかをリハ中に練習したりしていました。相棒の山本百合子さんに「今、ヨシヒコヤスカズって言ってなかった? 大丈夫?」って確認したり(笑)。

安彦

言いにくい名前ですから(笑)。具体的にどんな話をしたのかは覚えていないんですが、当時はそういうラジオによく、プロモーションで出たりしていましたね。

古川

3回目はわりと最近で、角川書店の新春感謝祭のパーティか何かでしたね。そして、4回目が『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅳ 運命の前夜』(2016年)の収録の時。僕がスタジオから出てきたところで、安彦先生とばったりお会いして。一言「お若いですね」って言われたんですよ。

安彦

僕はあまりアフレコに立ち会わないので、声優さんときちんとやり取りしたのって、実は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』が初めて。「お若いですね」って言っちゃったのは、これ、皆さん誤解されていると思うんですが、古川さんの方が僕より年上だからなんですよ。

古川

3回目のパーティの時に、アムロ・レイ役の古谷徹さんと一緒に記念撮影をお願いしたんですが、そのときに「実は僕、安彦先生より1歳年上なんですよ」って言ったら、すごくビックリされていましたよね。そして「勝った」っておっしゃられた(笑)。家に帰って、かみさんと大笑いしましたよ。

安彦

自分でも意味分かんないな(笑)。でも、この年になると、現場であんまり年上の人に会わなくなるんですよ。それがこんな見た目の若々しい人が僕より年上だってわかって、つい言っちゃったんでしょうね。

そして古川さんは見た目もそうなんだけど、声も非常に若々しい。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅳ 運命の前夜』で久しぶりにカイの声が入って、副聴室の連中、みんな固まっちゃったからね。「お若いですね」ってのはそういう意味です。

古川

いや、あの現場は本当に緊張しました。スタジオに入ったら、池田秀一さん(シャア・アズナブル役)と古谷徹さんがいる。オリジナルのキャストはその2人とギレン役の銀河万丈さんだけですからね。どこに座ろうかなって考えていたら、池田さんに「君は連邦側なんだからあっち(古谷さん側)に座りなさい」とか言われちゃいました(笑)。カイの声優は当然、若い方に変えられるだろうと思っていたので、お話をいただいた時は驚喜しましたよ。