Feb 06, 2020 interview

永瀬正敏が『ファンシー』で感じた監督の想いと共演者の"底力"、映画人・写真家として続く挑戦

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影響を受けた祖父との思い出

──俳優、そして写真家としても活躍されている永瀬さんが影響を受けた人物を教えてください。

写真館を営んでいた祖父からは大きな影響を受けています。といっても写真に関しては、僕がまだ子どもだったので、話はできなかったのですが。祖父が亡くなってずいぶん経ってから、祖父の撮った写真のネガや研究ノートを見つけました。写真以外のことになりますが、薩摩琵琶を弾いたり、絵がものすごく上手だったり、とにかくユニークで多趣味な人だったので、一番影響を受けていると思います。

──印象に残っているおじいさまとのエピソードを教えていただけますか。

祖父が木に裸の女性を彫って、その部分にペイントしたものが祖父母の部屋に飾ってあったんですけど、それを子どものころに見て「おじいちゃん、このエッチな女の人は誰?」って聞いたことがあったんです。そしたら「お婆ちゃんに決まってるだろ」って。祖母にまったく似てなかったのでわからなかったですし(笑)、裸なのに肌色じゃなくて真っ白にペイントしてあったので「おじいちゃんって変わってるな」と思ったんですけど、いまだにその木彫りの飾りは大事に持っています。いつもおじいちゃんと一緒にいましたし、楽しい時間をたくさん過ごせたのはいい思い出ですね。

出演の決め手となる脚本、注目の海外監督

──これまで国内外問わず幅広い作品に出演されていますが、出演作を決める際に大事にされていることはありますか?

一番は脚本です。例えば、どんなに素晴らしい脚本でも、読んでいる最中に集中力が途切れてほかのことをしてしまった脚本の作品には参加しませんでした。脚本を一気に読めた作品は映画としての骨格が全体的にちゃんとしていると感じるので、自分の役の大きい小さいはあまり関係なく参加したいと思えるというか。時に女優さんの役柄がおもしろくて、性別を超えられるならその役をやってみたいと、無理は承知で思うこともあります(笑)。そのぐらい全体的によくできたおもしろい脚本も多いですから。あとは今回のように、知り合いの企画なら脚本も読まずに出演を決めたり、『パターソン』(16年)の時はジム・ジャームッシュ監督から直接メールをいただいたので絶対に出演するとお返事したり。でも基本的には脚本を読んでからお受けするようにしています。

──海外の監督でいつかご一緒してみたい方はいらっしゃいますか?

たくさんいますよ(笑)!『馬々と人間たち』(13年)を撮ったアイスランド人のベネディクト・エルリングソン監督も気になっています。あと、最近は台湾に行くことが多いのでどうしても台湾の監督が思い浮かんでしまいますが、今後は映画を撮らないと宣言されているツァイ・ミンリャン監督も好きですし、アン・リー監督などご一緒したい監督がたくさんいますね。