『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』をはじめ、音楽×映画の名作を手がけてきた矢口史靖監督。8月公開の待望の新作『ダンスウィズミー』は、催眠術にかかって音楽を耳にすると勝手に体が踊りだしてしまうヒロインの受難を描いた抱腹絶倒のコメディ・ミュージカル。主人公を演じるのは500人のオーディションから選ばれ、女優・モデルとしても活躍中の三吉彩花。映画の公開を前に精力的に全国をプロモーションで駆けまわる合間の三吉に撮影を振り返ってもらった。
ひとつずつ壁を乗り越えていく達成感
──オーディションを受けたときは選ばれる予感はありましたか?
それがまったくなかったんです(笑)。オーディションはすごく緊張していて、受かる手応えが自分では感じられなかったので合格の連絡をいただいたときは「私のどこを決め手にしてくださったんだろう?」という驚きと、これから待ち受けているはずのたくさんの試練への不安がありました。
──撮影の3か月前から歌と踊りのレッスンを重ねたそうですね。
撮影までに準備する量も多かったので、最初は不安の方が大きかったのですが、練習を重ねていくうちに、ひとつずつ壁を乗り越えていく達成感がありました。矢口監督もレッスン中からずっと見てくださっていたのですが、「とにかく自信を持って演ってください」ということを言われました。それ以外はレッスン中の私にはほとんど何もおっしゃらずに、振り付けの先生ともうちょっと派手に見せたいとか、アクロバティックに見せたいという話をされていましたね。
──撮影中はオフィスカジュアルやドレスに身を包むので、レッスン中とは勝手が違いませんでしたか?
やっぱり実際に現場に入ると、小道具とかが沢山あってレッスン通りにはいかなかったりするので、朝リハーサルをしてから踊りが変更されることもありました。撮影の最初は夏だったので、今日も着ているこの服で真夏に外で踊ったときは死にそうになりました(笑)。でも、このスカートは踊る用に作っていただいているので、見た目よりもすごく楽なんですよ。私が回るとスカートが綺麗にヒラヒラするようになっています。
──矢口監督はどんな監督でしたか。
とても穏やかな方で、演者に対してもすごく親身になって寄り添ってくださるので、すごく信頼できる監督だなと思いました。矢口組はスタッフの方もみなさんすごく温かい方たちでした。そういう中で、監督の納得出来るものが撮れるまで、スタッフのみなさんが一丸となって追求していく現場でした。
──感情が高ぶって歌うのではなく、音楽が聴こえてくると体が反応してしまうという役は、これまでのミュージカル映画にはない発想だけに演じるのも難しかったのでは?
オンとオフの切り替えは、監督もいちばん撮り方に拘っていらっしゃった部分なので、なるべくその落差がつくように心がけていました。