Nov 21, 2016

インタビュー

耳の肥えた大人に広がる新たなムーブメント「楽曲派アイドル」。その最右翼で “ナイル・ロジャース歌謡”と称されるフィロソフィーのダンスへロングインタビュー!

本記事は、洋楽などを聴き込んできた“耳の肥えた大人”の音楽魂を大きく揺さぶる「楽曲派アイドル」を紹介したいと考えている。しかし、「アイドル」と聞いて訝しむ御仁もおられるかもしれない。
「アイドル」といえば、AKB48やももいろクローバーZ、あるいは乃木坂46などを思い浮かべるだろうか? もしくは、おニャン子クラブや松田聖子にまで遡る向きもあるかもしれない。だが、これからご紹介する「楽曲派アイドル」は、それらとはまた一味も二味も違うアイドルである。

まずはここで「楽曲派アイドル」というものを改めて定義しておきたい。そもそも「楽曲派」とは、アイドルファンを形容あるいは分類する言葉であった。アイドルを容姿やコンセプト、パフォーマンス、もしくはアイドル的要素(例えば「一生懸命頑張っている」とか「握手会などでの対応がいい」とか)などで評価するのではなく、あくまで「楽曲の良さ」で評価する一派である。彼らは、典型的なアイドル楽曲の中から音楽的に優れたものを峻別し、楽曲そのものを楽しむことを主眼としていた。だが、東京女子流やNegicco辺りからであろうか、こうした「楽曲派」のリスナーたちの“耳”に叶うアイドルが次々と現れてくるにつれ、「楽曲派」という表現がアイドル側を形容する際にも使用されるようになっていった。つまり「楽曲派リスナーの鑑賞に耐えうる音楽を提示するアイドル」=「楽曲至上主義アイドル」=「楽曲派アイドル」というわけだ。

そして今や、楽曲を重視する「楽曲派アイドル」はさらに増え、さらに多様化し、進化している。かつての「楽曲派リスナー」が支持した良質の楽曲は、あくまで「アイドル楽曲の範疇にあるもの」だったのに対し、昨今の「楽曲派アイドル」の楽曲は、「アイドル」の範疇を大きく逸脱するものが多い。それらは、優れたクリエイターたちがあれこれと工夫を凝らしながら自己の創造性を思う存分発揮した賜物というべきものだ。

現在の“アイドル”という磁場には、多種多様な要素が混在し、あらゆる表現を許容する懐の深さがある。本格的なEDMもあれば、エモコアやグランジ、’70~’80年代ハードロック、ファンクやR&B、ポストロックやラップ/ヒップホップなど実に多彩。何より、制作陣が「アイドルという雛形に寄せる」ようなことはせず、自身の表現へと振り切っているのが魅力だ。それこそが、作品を説得力のあるものにしていると言えるだろう。

もちろん、それをオーディエンスに直接提示する“アイドル”自身も決して「制作陣」や「楽曲」に負けてはいない。楽曲のクオリティに負けじと、自ら鍛え上げた歌とダンスで健気に表現を試みる者。楽曲に独自の解釈を施し、そこからさらなる魅力を引き出そうとする者。作詞や作曲、振り付けやデザインといった役割を担いながら果敢に制作陣への参画を試みる者。あるいは、自らが触媒となりクリエイターたちから新たな創造性を引き出す者。そんな風に「アイドル」と「クリエイター」の対峙する様が実に面白く、そこから生まれるものも実に刺激的なのだ。

 

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さて、今回ご紹介するのは、フィロソフィーのダンス。

この一風変わった名前のアイドルグループは、「FUNKY BUT CHIC」というキーワードを掲げ、哲学的な詞をダンスミュージックに乗せて歌う。プロデュースは、これまでウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、相対性理論など数多くのアーティストを手掛けてきた加茂啓太郎。

そのサウンドは、一部のファンからは“ナイル・ロジャース歌謡”と称されるように、ファンク/ソウルを基調としているが、随所に’70年~’80年代の洋楽黄金時代のポップ/ロック・サウンドへのオマージュと言うべきものがちりばめられている。そういう意味では、いわゆる“アイドルポップ”を期待する向きには少々難解かもしれないが、洋楽に慣れ親しんできた“大人”のハートのど真ん中を射抜くものと言えるだろう。大半の曲を作り、アレンジも手掛けているのは、新進気鋭のミュージシャン、宮野弦士だ。

そして「哲学的」と謳われるその詞は、元ふぇのたすのヤマモトショウが綴っている。言葉を大胆に削ぎ落としたり“中抜き”することで、敢えて“行間”を広く取り、そこに想像が膨らむような余地を作っているかのよう。確かに哲学的で難解だが、果てしなくイマジネーションを喚起する詞である。

そしてもちろん、こうした“難曲”が“アイドルポップ”として成立するのも(とはいえ、極めて異色なそれではあるが…)、そこに華やかさや力強さ、溢れる情感や仄かな哀愁を施す彼女たち4人の歌声やパフォーマンスがあってこそ、だ。圧倒的な歌声でサウンドに濃密なグルーヴを注入する日向ハル。艶やかな歌声と繊細な表現力によって聴衆をぐいぐいと引き込む奥津マリリ。独特の”電波声”でスタイリッシュなサウンドに捻りを加える十束おとは。そして、正統派アイドルの佇まいと歌声でサウンドに絶妙なバランス感覚をもたらす佐藤まりあ。この四者四様の歌声が様々な形で組み合わされることで、相互に引き立て合い、絶妙なコントラストを描く。それにより、哲学的な詞にさらなる陰影が付される。こうして「フィロソフィーのダンス」のサウンドが完成するのだ。

ライヴを重ね、じわじわとその名を浸透させてきたフィロソフィーのダンス。ソールドアウトとなった初のワンマンライヴも大成功に収め、待望の1stアルバム『ファンキー・バット・シック』をリリース。ますます勢いに乗る彼女たちに話を伺った。

 

──今、みなさんグイグイ来てますよね?

一同 (口々に)いやぁ~…。

──え?感じないですか???

ハル あんまり…。

マリリ 前よりは“手応え”というか、着実に進んできた感はあるんですけど、「ノリにノッテるゼ!」みたいな感じは無いですね(笑)。

おとは グイグイというよりは緩やかに上昇しているな、という感じはありますけど…。

──“緩やかな”ステップアップは感じているんですね。

一同 そうですね。

──例えば、お客さんが増えたとか。

一同 増えました~!

──それなりに手応えは感じてらっしゃるんですね。で、みなさんは“楽曲派”と呼ばれていて、楽曲の評価が高かったり、パフォーマンスの評価が高かったり、もちろんルックスも。そして最近はけっこうTVにも出られたり。まりあさんは地上波TVに出られたりしてましたよね。そこらへんにも「大きくなっている」手応えがあるのでしょうか?で、otoCotoでは皆さんのことをまだ“見つけて”いない人もいると思うので、まずはご自身で「フィロソフィーのダンス」とはどんなグループなのか、お一人ずつ紹介していただけますか?

マリリ はい!まずはリーダー、奥津からいきます!フィロソフィーのダンスは「FUNKY BUT CHIC」をテーマとして、’80年代~’90年代のR&Bやソウルなどの楽曲に哲学(=フィロソフィー)的な歌詞を乗せたグループです。

ハル もうそれ以外にはない!(笑)

──あ、付け加えることがなければ、そんな感じでいいですが…。

まりあ あっ、付け加えるとすれば、やはりライヴが一番魅力的だと思っています。ワーッと騒げたり、振りをコピーしたり、それ以外にも静かに聴いたりとか、いろんな楽しみ方があるグループだと思います。

おとは あと、個性の違う人が4人集まっているので、そのうちの誰か一人は必ず気になるんじゃないかと思います。それぐらい違った個性が集まったグループです。

 

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──グループ結成が2015年7月。みなさん結成前はそれぞれ活動されてたんですよね?

まりあ 私は5年前ぐらいからアイドル活動をやっていて…。「ナイスガールトレイニー」とか「オーガニック(本物)」といったグループでずっとアイドルをやってきました。ちょっと挫折した時もあったんですが、フィロソフィーのダンスのオーディションを受けて今に至る、って感じです。

おとは 私は、それまではステージに立ったことがなくて、フィロソフィーを結成する一年前に、好きな格闘ゲームの“公認応援団”を募集していて、それを受けたら受かったので、「コスプレをしながら格闘ゲームをしてゲームの魅力を伝える」っていう、自分の好きなことだけがやれる“ヲタク活動”のような仕事をしていました(笑)。

マリリ 私は高校時代からバンドをやっていて、そこからシンガーソングライターになって、その最中に(プロデューサーの)加茂さんに誘われました。なので、ずっとピアノ弾きながら歌ってました。

ハル 私もバンドをやっていて、その過程で加茂さんと知り合って誘ってもらいました。

──ライターの私もフィロソフィーのダンスに高い関心を持つ“ヲタ”として(笑)、“フィロのス”という略称で呼ばせていただきますが、フィロのスがスタートした時って、まあ、その時はアイドルだった人もいればそうじゃない人もいますが、どうでしたか? どんなお気持ちでした?

まりあ え~っと、どんな風に進んでいくとか知らされずに、加茂さんに「ライヴ観に行かないか」と誘われたんですよね。それで、観に行ったら「君たちメンバーだから」みたいにいきなり言われて…。

──えぇぇぇええ!

まりあ (笑)ホント始まりはよく分からないというか、いきなりというか…。

──「どっきり」みたいな感じだったんですね!

まりあ そうですそうです!「え?ホントに?」みたいな。まあ、誘われたメンバーもいたんですけど、審査っぽい審査はなくて…。

──え?審査を受けた後にライヴを観に行って、そこで“合格”を聞かされたのではなくて?

おとは 一回カラオケで歌わされました(笑)。でも、初めてのオーディションはそんなにかっちりしたものではなくて、私とかは、ほぼ歌と踊りは無視されて、「好きなゲームは何ですか?」とか「最近ハマってるゲームは何」みたいな、ゲームの話ばっかりで、結構ラフでフリーな感じでしたね(笑)。

まりあ そう。なので何を見て選んでもらったのかは不思議でした。

──マリリさんはどうですか?

 

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マリリ 私はシンガーソングライターとして歌っていました。“女の子が歌う”っていう点では同じことですけど、アイドルとは全然違いましたね。その当時はアイドルのことは全然知らなくて、バンド系の方が好きでした。自分自身がなることになって、そこからアイドルについて調べ、アイドルの音楽を聴くようになりました。YouTubeで「どんな人がいるんだろうなぁ」って思いながらいろんなものを見ましたね。その時に「サイダー!サイダー!サンバー!サンバー!」というのを知って…

──「サイダー」「サンバー」じゃないですけどね…(笑)。

まりあ アハハハ(笑)。

マリリ (笑)あれを知って「こんなのあるんだ!」ってびっくりしました!「サンダー!サンダー!」って言うんだな、って。

──「サンダー」でもないと思うんですけどね…(笑)。

まりあ フフフフ(笑)。

マリリ 難しいです。

──でも、今や“アイドル”してますよね?

マリリ そうですね。でも他のアイドルさんに比べれば、けっこう“ワイルド”だと思いますけど…。

──(笑)。ハルさんはいかがですか?

ハル 私はもともとアイドルには興味無くて、アイドルになるとも思ってなかったんですけど、バンドに見切りつけないといけないな、と思って、加茂さんに「何でもいいので入れてください」ってお願いに行って…。で、グループに入ることになったんです。「アイドルでもいいの?」って言われたんですが、「何でもいいです、やります」って言ったので抵抗はなかったです。でも、いざやってみると、評価される部分の違いだったり、求められているものの違いだったりで、けっこう戸惑いました。まあでも「アイドルにならなきゃ」とか「アイドルはこうでなきゃ」といった気負いのようなものは無くなりました。

 

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──今は自然体で臨めている、と。

ハル もうこのまんまです。はい。