―― 115分の作品の脚本描くという体験はいかがでしたか。
ここまでちゃんと長編映画の脚本を描いたのは初めてだったのでちょっと手こずりました。最初は衝動的にバーッと書き切ったのですが、そこから話を盛っていったり、整合性を考え直したり、こんな台詞を入れていこうなど後からかなり変更しました。
―― アドバイスを貰ったりしたのですか。
チームのん のメンバーに相談しながら脚本を組み立てていきました。自分が主演で“自分がこの役を演じる”と思いながら脚本を描いていると「この台詞は言わなくてもいいか」と自然と台詞を省いていってしまうんです。でも今回は台詞で伝えるということを“頑張ろう”と思っていたので、少しキザな台詞や強い台詞なども全部書いて、蛇足な部分を省いていきました。自分としては照れるような台詞もそのままやっています。
―― 『Ribbon』の特撮シーンで樋口真嗣監督や尾上克郎特撮監督が参加、予告篇は『8日で死んだ怪獣の12日の物語』でご一緒した岩井俊二監督が担当、さらに樋口監督による応援PVとして作成されたスペシャル映像「映画と生きる 映画に生きる」には、『この世界の片隅に』でご一緒した片渕須直監督を始め、緒方明監督、尾上克郎特撮監督、犬童一心監督、白石和彌監督、市井昌秀監督、沖田修一監督、枝優花監督など日本を代表する監督が出演されています。錚々たる監督陣と関わりながら、映画を宣伝するという体験はいかがでしたか。
とても面白かったです。樋口監督が中心となって、「応援PVを作りたい」を企画して監督達に声をかけて下さったんです。「こんなにも多くの監督が集結される動画はあまりないんじゃないか」と思うぐらいビックリして感謝しています。現場では監督ばかりが集まっているので、自分なりに「このシーンでのこの役はウルウルしてなくていいのか」と言って目薬を差していたり、監督同士が話し合いながらシーンを成立させようとしている姿は面白かったです。
―― 最後にお聞きしたいのですが、現時点で監督とは何だと思いますか。
監督とは‥‥。そうですね、難しいですが、監督とは、自分勝手な生き物だと思います。作品を作っていると自分の頭の中に撮りたい映像があるのでスタッフの皆さんに対して「何でわかってくれないの?何で頭の中を覗けないの?」と時々、思ってしまうんです。それくらいずっとアドレナリンが出ているんです。だから皆がウトウトしていても私は全然眠くもならなくて、そういう面では身体の作りも違うというか、自分勝手になっていくような感じさえしていました。
―― また監督として作品を作られますよね。
撮りたいです。いい題材を見つけて撮りたいですね(笑)。
会うたびに進化していく のんさん。今回は監督として再会し、作品にかけた想いや作品作りについて伺いましたが、感情の揺らぎをリボンの細やかな動きで表現するという発想も のんさん自身から生み出されたものであり、全てのキャラクターへの肉付けを怠らない細やかさも のん監督の繊細さによる成果なのでした。
映画の主題歌であるサンボマスター「ボクだけのもの」のミュージックビデオの監督も務め、出演もするその姿は、歌詞に溶け込んで体現され、動き回るカメラはほとばしる情熱を投影するかのようでした。多くの人を惹きつける魅力を放つ のんさんの“今”が詰まった作品であり、創作の面白さと創作人へエールを贈る映画『Ribbon』。本作を観て“何かを生み出してみよう”と思う人が増えることを私は願っています。
文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
コロナ禍の2020年。いつかが通う美術大学でも、その影響は例外なく、卒業制作展が中止となった。いろいろな感情が渦巻いて、何も手につかない。心配してくれる父・母とも、衝突してしまう。絵を描くことに夢中になったきっかけをくれた友人との再会、平井との本音の衝突により、心が動く。未来をこじ開けられるのは、自分しかいない。誰もが苦しんだ2020年。心に光が差す青春ストーリー。
脚本・監督:のん
特撮:樋口真嗣
特撮プロデューサー:尾上克郎
出演:のん、山下リオ、渡辺大知、小野花梨、春木みさよ、菅原大吉
配給:イオンエンターテイメント
©「Ribbon」フィルムパートナーズ
公開中
公式サイト ribbon-movie.com