Mar 01, 2022 interview

のんインタビュー 妥協のない“こだわり”と人との繋がりによってアイディアが実現できた『Ribbon』

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俳優、ミュージシャン、アート、声優など創作あーちすととして活動する のん が劇場長編映画『Ribbon』を完成。今までも初監督作品として『おちをつけなんせ』を発表していたものの、劇場公開は初。コロナ禍で卒業制作展を行えなくなった美大生の記事を読んだことから物語が生まれたという のん監督自身が脚本、監督、主演を務めた本作。自らが生み出した絵を捨てられてしまうという悲しみと、作品を発表出来ないもどかしさに葛藤する主人公いつかの想いをリボンの揺れで表現しながら、親友との本音のぶつかり合いや個性的な家族との関係、一人の青年との出会いを探る謎解きのような自分探しの物語になっています。そんな のん監督ならではの映画製作におけるこだわりや人との繋がりを伺いました。

―― リボンが宙に舞うシーンなど、どれも幻想的で美しかったのですが、リボンの表現を特撮で撮影しようと思った理由とは。

最初はCGで表現しようという方向性で、樋口真嗣監督と特撮プロデューサー尾上克郎監督とのミーティングが設けられたんです。そのミーティングの中で私が「リボンはこんな風に見えたらいい」「リボンをこんな風に見せたい」とアイディアを出したりしているうちに「これはCGでやらない方がいいかもね。合成にするか」と樋口監督と尾上監督が言って下さったんです。それで特撮で撮影することになりました。

―― ふわりとゆっくり飛んでいたり、どうやってあのリボンは撮られたんですか?

色々な方法がありました。例えば、リボンが外に伸びていくシーンでは釘を刺してリボンのルートを作り、それを引き抜いて逆再生しているんです。「こうするんだ!」と私も凄くビックリしました(笑)。後の処理で色々と動きを調整したりしていますけど‥‥。

水の中に入れたりもしていましたが、これは尾上監督が『陰陽師』(公開:2001年)を撮った時に「幽霊が登場するシーンで白い煙を水の中で出したものを合成したりしていたんだ」と仰っていたんです。だから今回もリボンもそんな感じで撮影されました。私が求めているリボンの動きが「けだるい、ゆるい感じに」と言っていたので「水の中だったら動きがゆっくりになるからいいかもしれない。空中に漂っているリボンだけど、水中の方が浮遊感が出る」と仰って下さったんです。

―― 今回の映画作りは色々と面白い経験になったのではないですか。

なりましたね(笑)。リボンの特撮まで体験出来てとても面白かったです。

―― 特撮以外で今回の映画作りでの新しいチャレンジはありましたか。

最後にリボンが結ばれてアートが完成するというシーンがあるのですが、同じ場所で違うセットを組まないといけなかったんです。その為、1日か2日はあったと思うんですけど撮影中にアートを作らないといけないスケジュールだったんですね。もちろん手伝ってもらったりもしたのですが、自分で作ると決めていたので「こんな風にセットチェンジするんだ。本当にセットチェンジは大変だ」と実感しましたね(笑)。

―― 演じながらカット割りも全部おこなったんですよね。

そうですね、全部の絵コンテを描きました。スケッチブックに絵コンテを描いていたのですが、そのスケッチブックが全部うまるぐらい描いていました。お陰でゆっくりは寝られなかったです。ただ夜の撮影があんまりなかったんです。室内だと昼間の光を作ったりして撮ったりもしていましたが、基本的には陽が沈んだら終わりという撮影の組み方をしていたんです。だから、いつもよりは寝ていたほうかもしれません(笑)。