―― 2005年に17歳でデビューされてから30代になり、更に変化し続けてらっしゃいますが、自分の中で役者としての考え方が変わるようなきっかけはありましたか?
俳優を楽しいと思えたことが一番大きいです。自分から進んで入った世界ではなかったので、全部の仕事が受け身だったんです。若かったこともありますが、24歳~25歳になった時に“お芝居が楽しい”と自分の中で思って、それに少しずつ経験していく中で色々な価値観に触れることが出来たり、色んな世界を感じる事が出来ることに“こんなに刺激的なことはない”と思い始めたんです。多分、それから変わって来たような気がしています。
―― きっかけとなった作品とかありますか。
2015年の舞台『マーキュリー・ファー』です。今ちょうど再演をしているのですが、当時、演出の白井晃さんに「芝居だけど芝居をするな」と言われたんです。その言葉がずっと頭に残っていて、今は僕の中でその言葉は色々な設定などをひっくるめて、【馴染め】だと思っています。ですが、【馴染む】って凄く難しいことだと今でも思っていて、それをどの作品でも毎回意識している感じです。
―― 舞台、映画、ドラマ、声の仕事など、どれも演じ方が違うとなんとなく思うのですが。
演じることに違いはないんです。先ほど言った“~ぽい”に繋がりますが、それが僕自身、嫌で(笑)。だから演じるって全部一緒だと思っています。例えば舞台だと物理的に声が届かないから声を大きくするだけで演じることは何も変わらない。どのフィールドに行っても変わらないんです。だから演じるのが凄く楽しいです(笑)。一生続けられたら幸せだなと思います。演じるということが軸で、声や絵など色々な表現に触れられたら嬉しいし、触れていきたいですね。
―― 役に入る前に毎回、やっていることなどありますか?
歴史上の人物だったら調べることぐらいです。後は自分から遠ざけない、“全部自分なんだ”と思って演じています。自分と全く違う人間を演じることは出来ないので、全部自分の一部というイメージで演じています。『コンフィデンスマンJP 英雄編』も『愛なのに』も自分の一部を見せているだけ、そんなイメージです(笑)。
―― 最後に今の自分を一言で例えるならどんな感じですか?
安心の【安】。精神的に安定している感じがしています。それが一番大事、それで仕事が出来る、出来ないに繋がってもくるんです。
デビュー当時からドラマや映画はもちろん、舞台でもその活躍を拝見していた瀬戸康史さん。確かに大きなサイズの映画やステージで演技をしているイメージを持っていた私にも『愛なのに』は斬新であり、パブリックイメージを覆す驚きと発見の連続でした。本棚に囲まれて静かに佇み本を読む姿も、愛を身体で伝えようとする情熱的な姿も、多田という人物の穏やかさと実直さを体現していて、それが瀬戸さんの一部であると言われてハッと気付かされたインタビューでした。物語により身体のサイズを変幻自在に操る俳優・瀬戸康史の旨みを味わう年が続きそうです。
文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦
ヘアメイク / 小林純子
スタイリング / 小林洋治郎(Yolken)
古本屋の店主・多田は、昔のバイト仲間、一花のことが忘れられない。その古本屋には、女子高生・岬が通い、多田に一途に求婚してくる。一方、亮介と婚約中の一花。結婚式の準備に追われる彼女は、亮介とウェディングプランナーの美樹が男女の関係になっていることを知らずにいて‥‥。
監督:城定秀夫
脚本:今泉力哉
出演:瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩、向里祐香、丈太郎、毎熊克哉、オセロ(猫)
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
©2021『愛なのに』フィルムパートナーズ
2022年2月25日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式サイト lr15-movie.com