―― 親交の厚い浅野忠信さんはマーベル作品に出演されていますね。
永瀬:そう!浅野に頑張ってもらって(笑)もっと出てほしいですね ! あとは『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』です。僕は幸運なことに現場に立ち会わせて頂いて。同じ時期に台湾で映画を撮影していて、その映画はアジアン・ビートシリーズという作品で、台湾編『シャドー・オブ・ノクターン』(1991年)を当初はエドワード・ヤン監督が撮る予定だったんです。(※アジアンビートの日本編 『アイ・ラブ・ニッポン』は永瀬正敏 主演)
でも『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の撮影が凄く延びちゃって監督が出来ないということでプロデュースに回ったので、出演している役者が凄く重なっているんです。『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』のプロデューサーだったユー・ウェイエンさんが台湾編の監督をされているんですけど、スイッチした感じで。なのでよく現場に遊びに行ったんです。
デビュー前のチャン・チェンさんもよく遊びに来ていました。その当時は、そこまで凄い作品になるとは思っていなかったんですけど、ちょうど台湾ニュー・ウェイヴが世界に打って出た頃だったので、台湾映画界には得体の知れない熱気があって。完成した4時間バージョンを観た時は“これは凄い、いつかこういう映画に出演したい”って圧倒されました。エドワード・ヤン監督(2007年死去)は、監督と役者としていつかご一緒したい監督のお一人でした…本当に残念です。
土居:大好きな映画でも出演したいという感じにならないんです。“素敵な映画だな”って客観的に観ている感じです。でもSF映画とか観ていると出演したいと思います。絶対に体験出来ない超常現象とか、自分が凄い超能力とか持っていたりとか、映画の中でしか体験出来ないことをしてみたいです。
しいてあげるなら『フィフス・エレメント』(1997年)が大好きです。『ニキータ』(1990年)『レオン』(1994年)などリュック・ベッソン監督作品が大好きです。リュック・ベッソンのやりたいことが常に出続けている、何も隠そうとしない、“これが俺のやりたいことだ!”っていうのが伝わって来るのが凄いと思っています。
―― 自分が作品作りの上で大切にしているものを二つ教えて下さい。
永瀬:監督との信頼関係です。本当に年下の監督が増えてきて“永瀬さん”って呼ばれるのが、居心地悪いんですけど(笑)これまで現場では“永瀬、永瀬”って呼ばれていましたからね。
現場では監督が一番偉いのは変わらないので、監督との信頼関係、監督を信じていればやっていけると思うので、共演者を含めて信じられる現場であることです。そういった意味で、映画に裏切られたことはないです。
あとは、お芝居で嘘に嘘を乗っけないこと…それはお客さんにバレてしまうと思うので。架空の世界の中、精一杯自分の役を生きることです。
土居:作品に愛を持って接する、同じ現場に居る皆に愛を持って接することですかね。現場現場によって人も変わっていくし、常に新しい人との出会いがあるお仕事なので、そういうところに感謝していますし、そこが魅力的だと思うので、出会いを大切にすることです。
あとは元々、人が好きなんです、現場で皆がザワザワ動いている感じとか一つの方向に向かっている感じとか凄く楽しいので、一緒に作品を作っている仲間のことを大切にしたいです。
―― 土居さんは、どんな女優さんになっていきたいですか?
土居:面白がってもらえる役者で居続けたいと思っています。“この人、何かしてくれるかも?この人だったらこんなこともしてくれるかも?”とか、面白がってもらえるようでありたいので、自分に線を引いておきたくないです。常に全開にオープンにして、何でも受け入れていたい。
ずっとそうあるのって難しいと思うので、尚更、心を開いて全てオープンにしていたいなって思います。具体的にこういう人っていうのはないですけれど、おばあちゃんになっても、“土居だったら凄く走ってくれるんじゃないか”とか。そんなチャレンジ精神のある女優でいたいです。
―― 永瀬さんのように、日本映画だけでなく、海外の作品に出たい役者さんは多いと思いますが。
永瀬:僕が最初に出演した海外作品は、『ミステリー・トレイン』(1989年)ですけど、その頃から日本の役者は海外に絶対行ける、行って欲しいと思っていました。僕は日本の役者は、どこの国の役者にも引けを取らないと思っています。ハリウッドの人達はあれだけの準備期間があって、沢山居る監督達で一人の人間を作っていく。
日本の役者は下手すると、2週間後インです。例えば、3日間で役作りをしないといけない状況を、見事に皆がやっているんです。その底力に世界は納得してくれると思います。どんどん行った方がいいと思うし、そういう世の中になると思います。役者だけでなく、若い監督さん達も、新人監督の作品にすんなりアル・パチーノが来てくれるという世の中になってくれると僕は信じています。
海外の人達はとても日本映画をリスペクトしてくれていますし。それは小津安二郎監督、黒澤明監督など、先輩方が作ってくれた道なんです、本当に感謝していますね。これからの映画界はもっとボーダレスになると思います。
再生ボタンを押すと土居志央梨さんのトークがお楽しみいただけます
観終わった瞬間、胸を揉みくちゃにされた感覚が残った『二人ノ世界』。こんな素晴らしい作品が6年の歳月を経て公開だなんて驚きでありました。それにしても相変わらず永瀬正敏さんは、映画を愛し抜いていて、後輩想いがハンパないっ ! それと土居志央梨ちゃんの肉体全体で表現する才能は天性のものなんだと納得。 二人がぶつかり合い、やがて、心の中に侵入し合い、一つに溶け合っていく過程が、感情から表情から画から滲み出てくる絶品映画なり。
文 / 写真・伊藤さとり
バイク事故による頸椎損傷のため、36歳という若さで首から下の自由を失った俊作のもとに、盲目の女・華恵がヘルパーとして現れる。京都・西陣を舞台に描かれる、二人きりの奇妙な介護生活と、その先で見つけた真実の愛とは…。全てを失った男と、目の見えない女との、二人だけの世界の物語。第10回日本シナリオ大賞佳作受賞作「二人ノ世界」の映画化作品。
監督: 藤本啓太
出演: 永瀬正敏、土居志央梨、 牧口元美、 近藤和見、 重森三果、宮川はるの、木村貴史、ミズモトカナコ
プロデューサー:林海象、岡野彰、片岡大樹、藤本政博
原作:松下隆一/小説「二人ノ世界」(河出書房新社)
配給:エレファントハウス
共同配給:イオンエンターテイメント
©2020『二人ノ世界』製作プロジェクト
2020年7月10日(金)イオンシネマにて公開
公式サイト : https://zounoie.com/2020/06/26/post-891/