Mar 21, 2019 interview

アラサー女性の悲喜こもごもをどう描き出した?大九明子×じろう『美人が婚活してみたら』制作秘話を明かす

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二人がクリエイターとして影響を受けた人物とは?

 

──ありがとうございます! では最後にotocotoではご登場いただいた方に影響を受けたり、ご自身のルーツになっている作品や人物を挙げていただいているので、お二人にもお願いいたします。

大九 私は2002年に亡くなったニキ・ド・サンファルです。「芸術家になってなかったら革命家になっていた」なんてかっこいいことを言う人で、風船にペンキを入れてそれを銃弾で撃つとか、ちょっと毒があって、かわいくて、というアートを作っていた方です。20代の頃、すごく好きで、那須にあるニキの美術館によく行っていました。生き様もかっこいいし、憧れましたね。

──どのような影響があったんでしょうか?

大九 当時、私は身の程もわきまえず、芸人なんていう恐ろしいものを目指しておりまして。凡人でも2本くらいはまぐれでいいネタを作れるんですけど、それを面白く再現するという、芸人として一番大事なところがダメだったし、前に出ることに興味がないんだってことに気づくのに時間がかかって。モノを作るのがとにかく好きだったんだけど、何を作っていいかわからなくて悶々と迷っていた頃に、映画館や美術館に行ったりしている中で、ニキに出会ったんです。20代の私を支えてくれた感じです。

じろう 僕はシティボーイズさん。20代の頃はダウンタウンさんとかみうらじゅんさん、モンティ・パイソンのDVDは全部揃えて観ていましたけど、やっぱりこういうことをやりたいと思ったのは、シティボーイズさんなんです。

 

 

大九 ずっとコンスタントに活動を続けていらっしゃいましたもんね。私も若い時、シティボーイズさんのライブをずっと観ていたので、じろうさんもお好きだという話を伺った時は、プロの芸人さんと同じものを好きだったんだってすごく嬉しかったです。

じろう 僕が狂ったように観ていたのは、三木聡さんがライブの演出をされていた頃のシティボーイズなんですけど、こういう笑いってあるんだなと思いました。

大九 ご一緒したことあるんですか?

じろう あります。きたろうさんは去年、単独ライブに来てくださいましたし、斉木(しげる)さんは一緒にドラマに出演させていただいて、飲みにも行かせてもらったり。大竹(まこと)さんも一緒にラジオに出ました。3人に会う、という夢は叶いましたね。でもやっぱりシティボーイズのライブに出たかったですね。

──憧れの人と会えたり、一緒に仕事できるのは嬉しいですよね。

じろう 地元の同級生が僕にシティボーイズを教えてくれたんですけど、そいつにはすぐ自慢しました(笑)。

取材・文/熊谷真由子
撮影/中村彰男

 

プロフィール

 

大九明子(おおく・あきこ)

1968年生まれ、神奈川県出身。芸人を志したのち、制作者サイドへ転身。1999年、監督・脚本作品『意外と死なない』でデビュー。2017年の『勝手にふるえてろ』で、第30回東京国際映画祭コンペティション部門 観客賞、第27回日本映画プロフェッショナル大賞ベストテン第1位に輝いた。その他の主な作品に『恋するマドリ』(07年)、『東京無印女子物語』(12年)、『ただいま、ジャクリーン』『モンスター』(13年)、『でーれーガールズ』(15年)などがある。

 

じろう(シソンヌ)

1978年生まれ、青森県出身。2006年、お笑いコンビ「シソンヌ」を結成。2014年に第7回キングオブコントで優勝。コンビ活動を行う傍ら、ドラマ「今日から俺は!!」(18年/NTV)への出演など、役者業でも活躍。執筆活動も行っており、2015年には川嶋佳子名義で小説「甘いお酒でうがい」を発表。2018年のドラマ「卒業バカメンタリー」(NTV)では、初のドラマ脚本を担当した。4月19日放送開始のドラマ「四月一日さん家の」(TX)でも脚本を手掛けている。

 

作品情報

 

『美人が婚活してみたら』

タカコ(黒川芽以)は誰もが振り返る美女。仕事にも恵まれ、ケイコ(臼田あさ美)という親友もいる。しかし、長く付き合ってから相手が結婚していることが発覚するという恋愛が3回も続き、気づけば32歳になっていた。不毛な恋愛に疲れ果てたタカコの口から「死にたい……」という言葉がこぼれ出たその夜、タカコは結婚を決意し、婚活サイトに登録。マッチングサイトで出会った非モテ系の園木(中村倫也)とデートを重ねながら、シングルズバーで知り合ったバツイチ・イケメン歯科医の矢田部(田中圭)に惹かれていくタカコ。一方、自身の結婚生活に悩んでいたケイコは、タカコが結婚後について全く考えていないことに苛立ち始め、二人は本音を激しくぶつけあう大げんかをしてしまう。

原作:とあるアラ子「美人が婚活してみたら」(連載:まんがアプリVコミ、刊行:小学館クリエイティブ)
監督:大九明子
脚本:じろう(シソンヌ)
出演:黒川芽以 臼田あさ美 中村倫也 / 田中圭  村杉蝉之介 レイザーラモンRG 市川しんぺー 萩原利久 矢部太郎(カラテカ) 平田敦子 / 成河
配給:KATSU-do
2019年3月23日(土)
© 2018吉本興業
公式サイト:http://bijikon.official-movie.com/

 

原作本紹介

 

©とあるアラ子/Vコミ

「美人が婚活してみたら」とあるアラ子/小学館クリエイティブ

漫画アプリ「Vコミ」で長期間、ランキング1位を獲得し続けた人気作。2016年3月のアプリ配信開始当初から話題を集め、スピンオフ作品が「週刊SPA!」に連続掲載されるなど注目を集め、現在までにコミックス版が3巻まで刊行されている。

 

大九監督が影響を受けた人物

 

ニキ・ド・サンファル

1930年生まれ、芸術家。アメリカ人とフランス人の血を引き、モデル活動を経て、60年代に絵の具を埋め込んだレリーフを銃で撃つというパフォーマンスで注目を浴びる。その後、女性をテーマにした作品「ナナ」シリーズで高評価を得て、彫刻、建築、演劇など多分野で活動。1998年に初来日を果たした。死後15年以上を経た現在も支持されており、各国で展示会が開催されている。

 

じろうさんが影響を受けた人物

 

シティボーイズ

大竹まこと、きたろう、斉木しげるの3人によるコントグループ。1979年結成。1980年代に放送されたお笑いオーディション番組「お笑いスター誕生!!」(NTV)に出場し、グランプリを獲得。以後、多方面で活躍を続けている。1980年代後半から2000年まで、コントライブの演出は三木聡が務めた。