Aug 03, 2023 column

世界は変わった、君たちはどう生きるか? Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』

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2018年に連載開始し瞬く間に人気を獲得した、大ヒット漫画「ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜」(小学館「月刊サンデーGX」)。2023年7月からアニメ放送が開始され、そしてこの8月3日よりNetflixにて実写映画が配信された。

ゾンビだらけの世界でも下を向かず「ゾンビになるまでにしたいこと」リストを作って、ひとつひとつ夢を叶えていく主人公たち。一風変わった設定のゾンビ・エンターテインメントが現代日本で共感を呼んでいる、その魅力に迫っていきたい。

荒唐無稽な世界に入り込めるキャスティング

実写版『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』で主人公アキラを演じるのは、ドラマ「風間公親ー教場0ー」(CX系)で新人刑事役を務め、現在放送中のドラマ「こっちを向いてよ向井くん」(NTV系)で主演を務める赤楚衛二。

これがハマり役だ。アキラは、夢と希望を抱いて映像制作会社に新卒入社するも、初日にブラック企業と知り、過酷な労働環境で社畜と化していく。世界がゾンビパンデミックで崩壊したなかで、逆に生きる活力を取り戻していくのだが、赤楚衛二の爽やかさ、キラキラ感が、主人公のゾンビ世界での能天気な好青年という不自然さを和らげ、軽やかに魅せ切っている。

また、アキラの親友・ケンチョ役の栁俊太郎とは非常にいいコンビだ。クールで2枚目な顔立ちの彼が演じる三枚目キャラは、「今際の国のアリス」(Netflix)で演じたラスボスとは打って変わって、どこにでもいそうなお調子者で根はいい奴感が溢れている。

そして彼らと行動を共にするツンデレ美女・シズカを演じるのは、白石麻衣。警棒を振り回しゾンビを退治し、神経を張り詰めていた彼女だが、アキラたちと行動するとともに、人間らしさを取り戻していく。

物語後半”やっぱり、まいやん、カリスマアイドルやん”と乃木坂46の絶対的エースだった彼女を再確認させてくれるので、ライブ演出さながらのサメゾンビと戦うシーンは必見である。

彼ら3人がゾンビだらけの世界を旅するゾンビコメディ。童貞×ゾンビで描いた映画『ゾンビランド』(2009)あたりが好きな方には好印象で受け取られることだろう。

主要3キャストの他、注目してほしいのは、アキラの就職先の憧れの先輩である、鳳沙織を演じた市川由衣だ。物語序盤における彼女の役割は非常に大きい。

この世界が、ゾンビパンデミックが起きても起きなくても無情で、優しくて、理不尽なことを教えてくれる。そして演技で体現するエログロナンセンス。彼女がゾンビ化するシーンで、本作『ゾン100』がゾンビ映画であることがはっきり伝わる。