Sep 01, 2017 column

小栗旬×福田雄一 大ヒット映画『銀魂』と同じ顔合わせのミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』東京公演レビュー

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ドタバタの先に……

 

2幕になると、ニューヨークから婚約者がやって来るが(ミュージカルファンには待ってました! の瀬奈のターンがある)、だが、タイミング悪く、フレデリックは無駄にエロ可愛いインガの誘惑に負けていて……。
怪物と恋、ふたつの問題でバッタバタの展開に。ここまで来ると、小栗旬は、かなり世界観にハマっている。
まるで、フレデリックがどんどん祖父の世界に引き込まれていくように。元々、長身で、蜷川幸雄のシェイクスピア劇に出ていた時、日本人には稀有な“マントの似合う俳優”という才能を遺憾なく発揮していたので、やはり燕尾服なども抜群に映える。ゴシップネタを逆手にとったようなギャグもスマートにやりきって、小栗旬は、ミュージカルという冒険の旅の途中、艶笑劇というアイテムまで手に入れたという感じがした。

 

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小栗と喜劇といえば、かつてシェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』(04年)と『間違いの喜劇』(06年)がある。シェイクスピアの喜劇の基本は、散々ドタバタして、世界がめちゃくちゃになった後、まあるく収まる。『ヤンフラ』もベースはそういった古典に則っていて、最後は歌と踊りで最高潮に盛り上がり、とても楽しい気分で見終わることができる。

 

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小栗旬が、福田雄一のミュージカルという新しい領域に踏み込んだ頼もしさと同時に、(昔から彼の芝居を観ている者としては)若干の寂しさを感じながら、最後の最後で、彼が舞台をはじめた頃の、あの、なつかしい大団円も思い出した。

最後に福田雄一は、ミュージカルを主としてやっている出演者にも敬意を忘れず、彼らの力を痛感させる部分もちゃんと作っている。細かい笑いだけでなく、大きなステージを生かした、大きな仕掛けも使って、スケール自在に楽しませた。

 

ヤングフランケンシュタイン

 

東京公演:東京国際フォーラム ホールC 8月11日〜9月3日
大阪公演:オリックス劇場 9月7日〜10日

作詞・作曲・劇作・脚本:メル・ブルックス
劇作・脚本:トーマス・ミーハン
演出:福田雄一
出演:小栗旬、瀧本美織、ムロツヨシ、賀来賢人、保坂知寿、吉田メタル、宮川浩、瀬奈じゅん、遠藤瑠美子、可知寛子、香月彩里、小暮キヨタカ、小山侑紀、坂元宏旬、高原紳輔、竹内真里、常住富大、丹羽麻由美、伯鞘麗名、辺田友文、福田えり、堀江慎也、横山敬、横山達夫

 

文・木俣冬

 

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。 ほか、ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。
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