リアルな映像にこだわった全世界待望のスカイアクションムービー、映画『トップガン マーヴェリック』がついに本日公開された。本作は「トム・クルーズが36年間誰にも渡さなかった」「俳優陣が実際に訓練を積み戦闘機に搭乗」など話題を集めているハリウッド超大作だ。コロナ禍で長らく見られなかった、華やかプロモーションツアーに、いま連日世界中を賑わせている。
ニュースで伝わるトム・クルーズの本気度もさることながら、この映画は、80年代に青春を過ごした方々にとってこれ以上なく期待度が高い作品だろう。いち早く鑑賞し、その期待を裏切らない魅力をここにお伝えする。
待ちに待った36年分のティーンエイジドリーム
お待たせしました。お待たせしすぎたかもしれません。これは、昨今、Netflixオリジナルドラマ「全裸監督」で再注目された80年代のアイコン的AV監督、村西とおる氏の名言だが、この言葉は本作にこそ、ふさわしい。1986年公開『トップガン』の36年ぶりの続編だ。
昨今、1980年代がブームになっている。今年2月公開の『ゴーストバスターズ/アフターライフ』も、『ゴーストバスターズ』(1984)、『ゴーストバスターズ2』(1989)の33年ぶりだが、『マーヴェリック』ほど長く空いた作品はない。同一キャストが演じる続編としてはギネスブック級の快挙ではないか。
当初は2019年夏公開だったが、製作の遅れを理由に20年夏に変更。さらにコロナ禍の感染拡大を受け、計4度延期。それにしても、よく作ってくれた。前作でティーンエージャーだった筆者と同年代は同じ気持ちだろう。
まずは前作のおさらいから。“トップガン”とは、サンディエゴ近郊ミラマーにある海軍戦闘兵器特殊学校の愛称。米軍はベトナム戦争で大量の戦闘機を失った教訓から、1963年に最も優秀なパイロットを養成しようと、各海軍飛行隊から最も優秀なパイロット1%を選び、約5週間の教科プログラムを行う学校を創設する。
この学校に関する記事を見た『フラッシュダンス』(1983)、『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)などのヒットメーカー、ドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーが映画化を企画、パラマウント映画に持ち込んだ。主演は『エンドレス・ラブ』(1981)、『卒業白書』『アウトサイダー』(1983)で人気急上昇中だったトム・クルーズ。米国では“ブラット・パック”(「小僧っ子集団」の意)の一人、日本では“YAスター(YAはヤング・アダルトの略)”と言われていた。
戦闘機乗りは男子の憧れのひとつ。しかも、エリート中のエリートの物語。F-14トムキャットでのドッグファイト。そこに、美人すぎる女性教官(ケリー・マクギリス)との禁じられた愛(現実ではご法度だそう)も描かれる。さらには、映画『フットルース』のタイトル曲よりもクールな「デンジャー・ゾーン」(ケニー・ロギンズ)や「愛は吐息のように」(ベルリン)といった珠玉の音楽もある。クルーズがさっそうとノーヘルで乗っていたのはカワサキ「GPZ900R A2」。白いTシャツにカーキにフライトジャケットといったファッションもブームになった。
実家からパンフレットを引っ張り出してきた。鑑賞記念スタンプが押してあった。「昭和62年6月12日 SHINJUKU PLAZA トップガン 愛と青春の旅だち」。地元千葉のロードショー館で見たはずだが、翌87年で、今はなき新宿プラザ劇場でも『愛と青春の旅だち』(1982年)の二本立てを見たらしい。そのプロダクションノートには、クルーズのこんな言葉も載っている。
「この映画は『ランボー』だのレーガン路線だの戦争フィーバーには関係ない。ぼくはプロパガンダ映画には興味ないよ。これはF-14の映画じゃなく、F-14を飛ばしている男たちの映画だ。大空はすばらしい。彼らは飛ぶのが好きなんだ」
『トップガン』は娯楽作の貫き方までカッコよかった。