Aug 27, 2021 column

映画『サマー・オブ・ソウル』は、1969年のカルチャーがすべて飛び出てくるタイム・マシーン

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今年(2021年)は音楽関係の映画がかなり充実している。そんな中で、50年以上も前に撮影され長く埋もれていた映画の公開が相次ぐ。一本は1972年1月にロサンゼルスの教会で録音されたアレサ・フランクリンのライブ映画『アメージング・グレイス』、そして、もう一本が本稿の主題となる1969年の6月末から8月にかけて撮影され、撮影者の倉庫に眠っていたものを2021年に掘り起こして公開した作品だ。そのタイトルは『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』という音楽ライブ・ドキュメンタリー映画だ。

1969年カルチャーの一大転換年

1969年夏、ニューヨーク・ハーレムにあるマウント・モリス公園(現在のマーカス・ガーべイ公園=フィフス・アべニューとマディソン・アべニューに囲まれた120丁目から124丁目までの約8万平方メートルの公園)で、6回(の週末)にわたって行われた無料のライブ・フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」を撮影したもの。当時人気が出始めたスライ&ザ・ファミリー・ストーン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、フィフス・ディメンション、スティーヴィー・ワンダー、マへリア・ジャクソン、ニーナ・シモンなど多数のブラック系アーティストが登場する。しかも、登場するアーティストは、ソウル、R&B、ファンクだけでなく、ジャズ、ラテン、ブルース、ゴスペル、ダンス・チーム、スタンダップ・コメディー、政治スピーチなど、ハーレムに住むブラックだけでなくありとあらゆる人種をターゲットにした一大イべントになった。まずなによりこの登場アーティストのラインナップだけでも本当にすごい。

1969年という年は、今から考えてみるとブラックだけでなくカルチャー一般でも大きな節目となった年だ。同年8月にはこのハーレムから100マイルほどのウッドストックで大規模なロック・フェスティバルが行われ、その記録映画がやはり大ヒットし、「ウッドストック」という単語はその後のロック音楽界を象徴するだけでなく、若者文化全般を定義するような歴史的なものになった。

わかりやすく比較すれば、「ウッドストック」が白人ロックの大イべントだったとすると、この「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」はブラック系をはじめとするマイノリティーたちの一大イべントだった。毎回5万人程度を集め、6週間の週末に行われたので、計のべ30万人を動員した。1969年のこのフェスは3回目だったが、この模様を撮影しようという人物がいた。それがハル・タルチンという元々テレビ・プロデューサーだった人物。彼はこのイべントを記録することがのちに必ず貴重なものになると信じて、約40時間分のビデオテープに撮影した。

映画『サマー・オブ・ソウル』は、1969年のカルチャーがすべて飛び出てくるタイム・マシーン
Tony Lawrence hosts the Harlem Cultural Festival in 1969, featured in the documentary SUMMER OF SOUL. Photo Courtesy of Searchlight Pictures. © 2021 20th Century Studios All Rights Reserved