Jun 30, 2019 column

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の壮大な主題&原作のミステリオの正体とは?

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※本項には一部ネタバレにつながる部分がございます。鑑賞前の方はご注意ください。

原作のミステリオ、プロの“騙し”の歴史

しかし、『FFH』にミステリオが登場すると聞き、勘のいい原作ファンは“ムズムズ”が発動したはずだ。

ミステリオ――クエンティン・ベックが誌面に初登場したのは1964年6月発行の『アメイジング・スパイダーマン』#13のこと。ハリウッドのしがないスタントマン兼特殊効果デザイナーとして働くベックは、何も持たない身でありながら、我こそスターでありヒーローだと信じてやまない夜郎自大な男であった。ある日、彼は、スパイダーマンなる存在が街中で悪事を働いていると報道されると知るや、自ら退治しヒーローになることを画策。しかし本当のスパイダーマンは悪事どころか街を救う“親愛なる隣人”。これでは計画失敗だ! と、業を煮やしたベックは得意の特殊効果を駆使し、偽スパイダーマンによる悪事を偽装。街の和を乱すスパイダーマンを倒す! と、ベック…改めヒーロー・ミステリオは誕生したのだ。スパイダーマンを倒し、町人から称えられ夢を叶えた…かに思えたが、そう事はうまく運ばない。彼の悪事はスパイダーマンにバレてお縄に。この瞬間、めでたく(?)ヒーローからヴィランへと転落したミステリオは、長年にわたりスパイダーマン、ひいてはアベンジャーズたちに、“騙し”を武器に戦いを挑んでいくことに…。

果たして『FFH』のミステリオは敵なのか? 味方なのか? 疑問を深めるだろう。公式の予告編ではニューヒーローと謳われ、監督のジョン・ワッツもインタビューにて「ヒーローとして描かれる彼は、今まで誰も見たことがない。スパイダーマンとミステリオとニック・フューリーがチームとなって、全世界に対する脅威と戦うというアイデアがエキサイティング」と語っている。

『キャプテン・マーベル』(19年)において、今までコミックスでは地球をつけ狙う狡猾な異星人として描かれていたスクラルが、迫害された存在として描かれ、タロスのように人類と共闘関係を結ぶ存在も現れるなど、マーベル史始まって以来の驚天動地の“裏切り”を見せたMCUだ。もしや…も十分あり得る。いや、その逆に裏切ってくるのか? …それは劇場でぜひ目にしていただき、見事“騙されて”ほしい。

『FFH』という新ヒーロー誕生を描いた作品で、MCUはフェイズ3に幕を閉じた。しかし、宇宙へ旅立った仲間たちのその後は? 単独行動をしていると噂の男は? ワカンダは? 全宇宙に散らばった仲間たちのその後は何一つ示されていない。しかも、最後のサプライズで示される『シークレット・インベージョン』(ヒーローに擬態していたスクラル人が静かに地球侵略を開始していた…という2008年から翌年まで続いたコミックスのシリーズ)の影…。無限に広がるMCU、来年より始まるフェイズ4は、今まで以上のスケールを展開していくことになりそうだ。

文/ますだやすひこ

公開情報
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』

ピーター(トム・ホランド)は夏休みに、学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出かける。しかしそこに待っていたのは、元S.H.I.E.L.D.長官であるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)だった。新たな脅威を察したニックは、その戦いに向けてスパイダーマンの力を必要としていたのだ。目の前に立ちはだかる圧倒的な敵にピーターは怖気づくが、ニックはその使命をスパイダーマンに託す。ヴェネチア、ベルリン、ロンドンなどヨーロッパ都市をはじめ、各国を危機に陥れるのは、火や水など自然の力を操るエレメンタルズ。ニックは異次元から来たというミステリオ(ジェイク・ギレンホール)をピーターに引き合わせ、彼もまた、ピーターと共に敵に立ち向かっていく。
監督:ジョン・ワッツ
脚本:クリス・マッケナ、エリック・ソマーズ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、サミュエル・L・ジャクソン、ゼンデイヤ、コビー・スマルダース、ジョン・ファヴロー、J・B・スムーヴ、ジェイコブ・バタロン、マーティン・スター、マリサ・トメイ、ジェイク・ギレンホール
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開中
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公式サイト:Spiderman-Movie.jp