Apr 14, 2018 column

高い身体能力と確かな演技力で役柄にリアリティを与える俳優・佐藤健の魅力

A A
SHARE

静と動の演技で魅せた『るろ剣』、リアルな青春恋物語へと昇華した『カノ嘘』

 

香港でジャッキー・チェンやドニー・イェンといった一流のアクションスターのもとでスタントに携わった谷垣健治がアクション監督を務めた『るろうに剣心』は、ワイヤー×殺陣で漫画チックな激しいアクションを構築。NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)でも佐藤健(岡田以蔵役)と組んでいた大友啓史監督がメガホンをとった本作で、映像を観る限り、かなり高度なアクションをこなしており、その身体能力の高さを知らしめた。実際、現場でも彼の運動神経の良さに助けられた場面が何度もあったとのこと。この凄まじいアクションに応える一方で、「人を殺したくない」という信念のこもった眼差しと、穏やかで落ち着いた口調で緋村剣心というキャラクターに息吹を与え、静と動の演技を魅せた佐藤健。ちなみに「~ござるよ」という、いかにも漫画チックな語尾をあんなにナチュラルに言ってしまえる俳優はなかなかいないのではないだろうか。

もう1作の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』は、「僕の初恋をキミに捧ぐ」や「僕は妹に恋をする」などの青木琴美原作の少女漫画。人気ロックバンドのメンバーだったものの、ある出来事をきっかけに一線を引き、現在は正体を隠しながらサウンドクリエイターをしている小笠原秋が、天才的ボーカリストの女子高生・理子と恋に落ちるという、いかにも少女漫画な設定なのだが、佐藤健が秋を演じたことで、びっくりするほどリアルな青春恋物語になっているのだ。気怠い雰囲気、どこか投げやりな口調、いつもの2割減にした眼力が秋というキャラクターをリアルにし、さらにオーディションで選ばれた演技経験ゼロの大原櫻子を相手にした包容力も感じさせた。少女漫画らしいちょっと気障なセリフやシチュエーションももちろんあるのだが、それすら現実的に見せてしまう表現力はかなり貴重。ちなみに本作では物憂げゆえの色香がダダ漏れているのが佐藤健作品では珍しいのではないだろうか。

 

『亜人』(Blu-ray&DVD 2018年4月18日発売) ©2017映画「亜人」製作委員会 ©桜井画門/講談社

 

やかで精妙な演技、作品ごとの変幻自在ぶり――待機する今後の作品にも期待

 

そんな大人な『カノ嘘』の後で、童貞臭を醸し出す『バクマン。』があったり、ドラマ「天皇の料理番」(15年)では素朴な田舎の青年に扮したかと思えば、『何者』(16年)ではイマドキ就活大学生を演じたり、『るろ剣』や『亜人』(17年)といったデフォルメされたキャラクターに人間味を与えたり。また、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)では病気になった恋人を一途に愛する好青年の悲しみと喜びを体現したり。わかりやすく振れ幅の大きい役に挑戦しました!という派手さは微塵もないけれど、作品ごとの変幻自在ぶりは、実は凄いものがある。本人は役作りで「こんな苦労をした」とか「ここが大変だった」ということを声高に言うタイプではないものの、おそらく作品とキャラクターに真摯に向き合っているからこそ、どの作品、どの役柄においても細やかで精妙、地に足がついた演技で魅了するのだろう。ある意味では憑依型とも言える彼の俳優としてのポテンシャルの高さには目を見張るものがある。

現在はNHK朝の連続ドラマ小説「半分、青い。」で再び高校生役に扮している他、公開待機作『億男』(大友啓史監督/10月19日公開)では宝くじで大金を当てた主人公を、『ハード・コア』(山下敦弘監督/18年公開)では山田孝之の弟役にしてエリート商社マンをそれぞれ演じている。今後も、どんな世界観でもリアリティをもって体現してくれる彼の出演作品を観るのが楽しみだ。

文/熊谷真由子

 

 

作品情報

 

映画『いぬやしき』

2018年4月20日(金)公開
配給:東宝
©2018「いぬやしき」製作委員会 ©奥浩哉/講談社

 

『亜人』

豪華版 Blu-ray:6800円(税抜) DVD:5800円(税抜)
通常版 DVD:3800円(税抜)
2018年4月18日(水)発売
発売元:東宝・講談社 販売元:東宝
©2017映画「亜人」製作委員会 ©桜井画門/講談社