Feb 16, 2019 column

鍵となる“配信作品”、日本映画の受賞の可能性は?!第91回アカデミー賞を予想&徹底解説

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日本作品の強力なライバル、もし作品賞が『ROMA/ローマ』なら…

 

『未来のミライ』は、ゴールデン・グローブにもノミネートされたほか、アニメーション賞の最大の前哨戦であるアニー賞で、インディペンデント作品賞を受賞。ただし、ゴールデン・グローブや、アニー賞でメインとなる長編アニメーション賞は『スパイダーマン:スパイダーバース』が受賞しており、アカデミー賞での逆転は難しそう。純粋にノミネートを祝福したい。

 

『万引き家族』(Blu-ray・DVD 2019年4月3日発売) ©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 

一方の『万引き家族』も、同じ外国語映画賞に強力なライバルがいる。メキシコ(スペイン語)の『ROMA/ローマ』だ。ゴールデン・グローブと違って、アカデミー賞は作品賞と外国語映画賞の候補が重なることが可能。つまり受賞も問題ない。『ROMA/ローマ』は作品賞と外国語映画賞の同時受賞という可能性もあるのだ。しかし過去に、同時受賞の例はない。2000年度の『グリーン・デスティニー』が両部門にノミネートされたときは、外国語映画賞のみ受賞した。作品賞にもノミネートされるほどの作品なので、外国語映画賞は受賞して当然、という流れである。しかし『グリーン・デスティニー』の場合は、作品賞を受賞する可能性は極めて低かった。『ROMA/ローマ』はその可能性があり、そうなるとアカデミー会員に「『ROMA/ローマ』が作品賞なら、外国語映画賞は他の作品を評価しよう」という心理がはたらくかもしれない。

『万引き家族』もカンヌ国際映画祭のパルムドールや、これまでの前哨戦の結果は申し分なく、アメリカの配給会社もオスカーキャンペーンに力を入れてプッシュしている。しかし今年の外国語映画賞には他にも強力なライバルがいて、ポーランドの『COLD WAR あの歌、2つの心』は監督賞や撮影賞にもノミネートされているので、『ROMA/ローマ』にも劣らない作品全体の勢いがある。ただ、同作のパヴェウ・パヴリコフスキ監督は4年前の『イーダ』ですでにアカデミー賞外国語映画賞を受賞しており、2度目はそう簡単ではない……というわけで、『万引き家族』が、10年前の『おくりびと』の再現となる希望は残されている。

『ボヘミアン・ラプソディ』や『万引き家族』など、例年になくわれわれ日本人にとっても親しみのある作品が、最後まで激戦に加わっている。それだけでも今年のアカデミー賞授賞式への期待度は高いのではないか。「予想できない」サプライズを待ちたい。

文/斉藤博昭

 

関連作品紹介

 

Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』

独占配信中

 

 

『女王陛下のお気に入り』

公開中
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox

 

 

『グリーンブック』

2019年3月1日公開
配給:ギャガ
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

 

 

『バイス』

2019年4月5日公開
配給:ロングライド
© 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

 

 

『ブラック・クランズマン』

2019年3月22日公開
配給:パルコ
© 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

 

 

『ボヘミアン・ラプソディ』

公開中
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox

 

 

『万引き家族』

通常版 Blu-ray:4700円(税抜) DVD:3800円(税抜)
2019年4月3日発売
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.