Nov 25, 2017 column

大人気ドラマ『陸王』 折り返しの6話を前に、その魅力を分析する

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日曜劇場『陸王』(TBS)は、内容も視聴率も高め安定。11月19日(日)、30分拡大で放送された第5話は、16.8%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)で、5話中最高だった。 『陸王』は、『半沢直樹』(13年)、『ルーズヴェルトゲーム』(14年)、『下町ロケット』(15年)とドラマ化されるとどれも高評価となる、ベストセラー作家・池井戸潤作品が原作。埼玉県行田市の老舗の足袋製造業者がその技術を使って、陸上選手のためのランニングシューズ“陸王”を開発する。その血と汗と涙の取り組みを主軸に、仕事に賭ける人間たちの情熱や誇り、志を同じくする者同士の友情、中高年と若者の触れ合い、家族愛、古き良きものへの敬意などがたっぷり盛り込まれたヒューマンドラマだ。  

『陸王』5話までをおさらい

  5話までのあらすじを、カンタンに200文字程度で振り返ると、行田市に百年続く老舗の足袋製造会社・こはぜ屋の四代目社長・宮沢紘一(役所広司)は時代の変化に伴う経営難に直面していたが、長年蓄積してきた足袋のノウハウを使ってランニングシューズを作って起死回生をはかる。 シューズは名付けて“陸王”。この画期的なシューズを、陸上競技界、期待の星・茂木選手(竹内涼真)に履いて大会に出てもらうことに成功する、という流れだ。 そこまで至るには紆余曲折あり、じつにたくさんの登場人物がかかわってくる。 まずは、理想的なソールの素材として最適なシルクレイの特許をもった飯山(寺尾聰)。この人物がいなければ、陸王のソールは作れない。彼は、優秀な技術者だが、会社を倒産させてしまい日影の道を歩いていた。 顧問となってこはぜ屋に参加した飯山の右腕になったのは、宮沢の一人息子・大地(山崎賢人)。彼は就職がなかなか決まらず腐っていたが、父とその会社の人々や飯山の働く姿に血が騒ぎ、会社を手伝うことを選ぶ。 茂木をサポートしていた米国の一大スポーツ用品メーカー・アトランティスのシューフィッター・村野(市川右團次)は、営業部長の小原(ピエール瀧)が、致命的な負傷をした茂木を簡単に見放そうとすることに反発し、こはぜ屋に加担する。 最高の技術、最高の知識を得て、陸王は完成に近づいていく。 こはぜ屋で働く人々が、縫製課のリーダー・あけみ(阿川佐和子)を筆頭に一致団結して頼もしい。たったひとり、何かと懐疑的になるのは経理担当の富島(志賀廣太郎)だが、四代続いた老舗への愛と誇りと、経営に厳しい仕事熱心な人物で、彼も絶対に欠かせない存在だ。「倒産はギックリ腰みたいに一度やったら繰り返す」や「偏見じゃなくて経験ですよ」は富島の名言。 地方都市の小さな会社には融資してくれる取引銀行も大切。親身になってくれ、陸王をつくるヒントをくれた埼玉中央銀行行田支店の前担当・坂本(風間俊介)は、異動になっても、こはぜ屋の飲み会(作戦会議的なことも兼ねている)にも参加する。現担当・大橋(馬場徹)は、坂本と比べて冷たいが、陸王のソールを使ってつくった新型の足袋(足軽大将、大橋は「足軽なんとか」と呼ぶ)の売れ行きがいいと、融資を検討するという、銀行員として的確な判断力をもっていた。情に流されないのも仕事のうちだ。 また、それほど話に重要に絡んでくるわけではないが、陸上部監督・城戸を演じているTEAM NACS の音尾琢真の白髪交じりの無精髭に坊主頭の飾り気のなさが、男臭くて、なかなかいい。 彼だけでなく誰もかれもが、長年、仕事の現場で自分らしさを形作ってきた歴史が見える人たちばかり。そんな人々と関わり合いながら、陸王を開発する宮沢は、けっして諦めない男。仕事にも人にも誠実で、「嘘から出たまこと」を信条に「強く思っていれば道は開ける」となにごとにも粘りに粘る。それにまず根負けしたのが飯山で、茂木もそうだった。茂木は最初、足袋の靴を軽視していたが、負傷した足をなんとか回復させようと思ったとき、陸王の力に注目する。 そして5話では、ようやく陸王を履いて大会に出る決心をしたものの、再び元のサポート会社アトランティスの誘惑に負けそうになり、どうなる? と視聴者をやきもきさせながら、結果、陸王を履くという最大のカタルシスが描かれた。