Aug 11, 2023 column

"映画への愛が十分にあるなら、いい映画を作ることができる" 本人出演NGドキュメンタリー『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』で振り返る監督作品全9作

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QTフィルモグラフィー 1992〜2004

ロサンゼルスのビデオショップ「マンハッタン・ビーチ・ビデオ・アーカイブ」の店員として働きながら、無数の映画を浴びるように鑑賞し、仲間たちとシネマ・トークに興じる。クエンティン・タランティーノが、そんな典型的映画オタクであったことは超有名な話(この頃のエピソードは、『死霊のはらわた2』で知られる脚本家のスコット・スピーゲルが証言している)。 そんな映画オタクが、どのようにしてハリウッドに殴り込みをかけ、時代の寵児となったのか。本作の逸話・秘話を踏まえつつ、彼のフィルモグラフィーを簡単に振り返っていこう。

1.『レザボア・ドッグス』(1992)
タランティーノ、記念すべき監督第1回作品。真っ黒なサングラス&真っ黒なスーツに身を包んだ6人の男たちが、大掛かりな銀行強盗を計画するも失敗。「この中に警察の犬がいるのでは」と疑心暗鬼に駆られ、やがて血を血で洗う内部抗争に発展していく。タランティーノは監督・脚本・出演の3役を務め、その才能を世界に知らしめた。ドキュメンタリーでは、ふてぶてしいミスター・ブロンドを演じるマイケル・マドセンが、Stealers Wheelのヒット曲「Stuck in the Middle with You」に合わせて踊るシーンはハイライトのひとつだが、実はマドセン自身はダンスが大の苦手で、踊りたくなかったという逸話が本人の口から語られる。

2.『パルプ・フィクション』(1994)
監督2作目にしてカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した、タランティーノの代表作。3つの異なるエピソードが時系列シャッフル状態で描かれる、新機軸のクライム・ストーリー。『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)で一躍スターダムにのし上がったものの、その後長らく低迷が続いていたジョン・トラボルタは、殺し屋のヴィンセント・ベガを見事に演じきり、一気にスターの座に返り咲いた。実はこのヴィンセント役、もともとは“ある別の俳優”の為にアテ書きされていたことが本作で明かされる。

3.『ジャッキー・ブラウン』(1997)
70年代にカルトな人気を博した、ブラックスプロイテーション映画。そのミューズだった女優パム・グリアを主演に迎え、黒人映画とその時代への愛をふんだんに詰め込んだ作品が、この『ジャッキー・ブラウン』だ。本作ではマックス役を演じたロバート・フォスターがインタビューに登場し、「落ち目だった自分が起用されるのは意外だった」と告白。タランティーノに謝辞を述べている(彼はこの演技で第70回アカデミー賞助演男優賞にノミネート)。彼もまたジョン・トラボルタと同じく、タランティーノによって再起を果たした1人だった。

4.『キル・ビル』(2003)、『キル・ビル Vol.2』(2004)
女暗殺者“ザ・ブライド”の復讐の旅路を描く、超弩級のアクション・ムービー二部作。日本のヤクザ映画、香港のカンフー映画、マカロニ・ウエスタンへのオマージュが充満している(俺たちのソニー千葉も出演!)。オーレン・イシイを演じるルーシー・リューの「ヤッチマイナァ!」は、タランティーノ映画の中でもベスト・フレーズのひとつだろう。このドキュメンタリーでは、撮影中にユマ・サーマンが自動車事故を起こしてしまった衝撃的映像がインサートされている。