03. 音楽評論家が選ぶ2022年配信オリジナル映画
『ジャネットジャクソン 私の全て』(Hulu / U-NEXT)
多くを語らないジャネットが語る幼少期から現在
基本的には、マイケル・ジャクソン同様、マスメディアにはあまりしゃべらないジャネット・ジャクソンが初めてドキュメンタリー映画で口を開いたことで話題になった『ディス・イズ・マイ・ストーリー、マイ・トゥルース』(邦題、ジャネット・ジャクソン~私の全て~)(44分x4回連続)が全米で2022年1月、日本でも2022年6月にケーブルテレビで放送された。
当初は、次の新作アルバム・リリース、ドキュメンタリー公開、そして、全米・世界ツアーへというタイム・スケジュールのようだったが、2020年初頭からのコロナ禍のため、すべてが延期となり、この時期の公開となった。公開当時はこれが公開されることで、アルバム発売、ツアーと見られたが、ツアーは先ごろやっと発表された。(2023年4月から北米ツアー開始)
さて本作は、ジャネットが生まれ故郷のインディアナ州ゲイリーを訪れるところから始まる。帯同しているのは、ジャクソン家の末弟でジャネットと年齢も近いランディ・ジャクソン。ランディは1961年生まれで、1966年生まれのジャネットより5歳上だが、現在はジャネットのマネージメントもてがけている。
ジャクソン家の生家は、いまも残されており、その住所2300 Jackson Street は、ジャクソンズのアルバムのタイトルにもなったほど。その小さな部屋で、兄弟・姉妹がベッドをシェアして過ごしていた頃のことが語られる。ジャクソン5が1969年モータウンからデビューすると、まもなくジャクソン・ファミリーはロスアンジェルスに引っ越すので、ジャネットは、あまりこのゲイリーの小さな家を覚えていないらしい。兄のランディにいろいろ解説されて、感慨深げだ。
4部構成のドキュメンタリーは、1部がそのゲイリー時代から、ジャネットがまだ子供時代にジャクソン兄弟たちとテレビに出演していた頃のアーカイヴ映像など。2部ではA&Mと契約し2枚アルバムをだすものの、それほど成功せず、心機一転ミネアポリスの新進気鋭のプロデューサー、ジミー・ジャム&テリー・ルイスにプロデュースを委ねるあたりの話。
そして、この頃、彼女が極秘に人気グループ、デバージ兄弟の一員、ジェームス・デバージと結婚・離婚したときのことなどを赤裸々に語る。このあたりは、これまでほとんど出ていなかった。
そして第3部で『コントロール』が世界的ヒットになり大成功、映画出演も果たし、名実ともにアメリカを代表するエンタテイナーに。第4部で2004年『スーパーボウル』のハーフタイムショーでジャスティン・ティンバレイクと共演し、誤って胸を出してしまい一斉にバッシングされたあたりのいきさつを描く。個人的にはこのあたりにとても興味を持った。
5年以上かけ本人を含め関係者に取材し、さらにこれまでに表にでていないホームビデオなども集め、丁寧に作り上げた。あまり多くを語らないように見えるジャネットが、意外とその芯の強さを見せ、何事も素直に語ったように見えたドキュメンタリーだった。
文/吉岡正晴