03. 映画ライターが選ぶ2022年おすすめ映画
『ウェディング・ハイ』:登場人物一人一人の動きから目が離せない群像コメディ!
幼い頃、人並みに花嫁さんや結婚式に憧れ、「自分だったらこういうドレスを着たい(&お色直しは何回とか)」「披露宴は好きなお花を飾って‥‥」などと妄想したものです。年月が経ち、何回か友人や親戚の結婚式や披露宴に出席しましたが、「舞台裏ではどんなことが巻き起こっていたのだろう?」と思わず想像してしまうのが、映画『ウェディング・ハイ』。結婚式を軸に、主役である新郎新婦を取り巻く人たちによって繰り広げられる群像コメディです。
新郎新婦の要望を出来る限り叶えるために「NOとは言わない」ウェディングプランナー・中越真帆を演じるのは、コメディエンヌっぷりに定評のある篠原涼子さん。穏やかだけど、やや人の意見に流されやすい新郎・彰人を中村倫也さん、天真爛漫な新婦・遥を関水渚さん、遥の元カレで、花嫁を奪略しようと企てる八代裕也を岩田剛典さん(EXILE/三代目 J SOUL BROTHERS)と、これだけでも豪華なキャスト陣!
そこに加えて、披露宴会場に姿を現す、謎の男を向井理さんと、もはや「誰が主役なの?」と思うのですが、ちゃんとそれぞれに意味があるのでぜひチェックしてください。
本作の脚本は、近年脚本家としての活躍の場を広げている芸人・バカリズムさん。シュールな笑いを所々に入れこんでいて、細かいシーンに散りばめられた伏線を最後にゴソッと回収する手腕は「さすが!」と言えます。
前半の見どころは、彰人と遥(主に遥)がどんな披露宴にしたいか、会場やドレス、テーブルクロスの柄に至るまで、あらゆる選択に対する新郎新婦の温度差! 彼女の希望は叶えてあげたいけど「正直どうでもいいや」という彰人の心の内がモノローグとして語られていて、クスリと笑いを誘います。次の悩みどころは”披露宴にだれを呼ぶか”。限られた人数の中でお互い呼びたい人を厳選しなければならないのに、何故か2人に全く関係ない人が⁈
そんなこんなで迎えた結婚式当日。ここでのイチ押しは、友人や親族、職場の上司たちにとって見せ場である、披露宴でのスピーチや余興のシーンです。主賓挨拶に人生を懸ける新郎の上司役の高橋克実さん、乾杯の音頭をとる新婦の上司役を皆川猿時さん、新婦の父を六角精児さんと、これまたクセ者ぞろいでキャラクターが大渋滞を起こしているのですが、色々な人が同時進行で”何か”をしているので、誰ひとりの動きも見逃せません。
終始ドタバタ劇が続くのですが、新婦の高校時代の恩師によるスピーチにホロリとする場面も。他にも、結婚式あるあるが描かれているので、経験したことがある方は「自分のときはこうだったな~」と思い出すことがあるかもしれませんし、結婚式を控えている方は参考になる部分もあるかも?しれません。本作は出席する人たちも、観ている人も”ハイ”になるエンターテインメント作品です。
文/根津香菜子
監督:大九明子
脚本:バカリズム
出演:篠原涼子、中村倫也、関水渚、岩田剛典、中尾明慶、浅利陽介、前野朋哉、泉澤祐希、佐藤晴美、宮尾俊太郎、六角精児、尾美としのり、池田鉄洋、臼田あさ美、片桐はいり、皆川猿時、向井理、高橋克実
配給:松竹
© 2022「ウエディング・ハイ」制作員会
公式サイト movies.shochiku.co.jp/wedding-high-movie
配信サイト Amazon Prime Video/U-NEXT