震災後に僕が見入っていた番組に、NHK Eテレで放送されていた『21人の輪 ~震災のなかの6年生と先生の日々~』というものがあった。11年6月から翌年4月にかけて不定期に全10回が放送されたドキュメンタリー番組。福島県相馬市のある小学校の6年生21人の子供たちを追った内容だった。
大人が見る震災関連のドキュメントや報道ではどうしてもこぼれてしまう、あるいは全く目が向けられなかった、被災者である子供たちを彼らの目線で伝えてきていた。この子たちがその状況下でなにを考え、これからをどうしたいと思っているのか。そこで語られる彼らの悩みや想いは大人から見れば些細な問題だ。しかし子供にとっては大事なことが子供たちの視点で淡々と取材し語られ描かれていた。Eテレだから出来た番組であったと思う。見るたびに胸が締め付けられる思いがし、「そりゃそうだよね」と共感をすることもあった。(どういう理由であるのか再放送もなく、NHKオンデマンドにも入っていないのが残念なのだが)
2年前の2016年、彼らのその後を取材した特別編『あれから5年後の子どもたち~福島 相馬市~』が放送された。その中で、21人の中の1人であった女の子が「震災後に『魔法少女まどか☆マギカ』と『あの花』にはまった」「将来アニメのシナリオライターになりたい」と語っていたのが強く印象に残った。どちらも“あの時”の作品だ。『まどか☆マギカ』は震災で放送が中断となり(翌4月21日に一挙放送で最終回を迎えた)、『あの花』(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』)は4月15日から放送が始まった。どちらも深夜アニメであるし、当時の彼女たちの年齢や状況を考えたらリアルタイム視聴ではないだろう。 しかしあの時にラテ欄から消えた作品と、その1ヶ月の終わりを告げるかのように開始された作品が、数年を経てそのように誰かが前に進んでいくための影響を与えていたのかということにちょっと胸が熱くなった。テレビやアニメといった娯楽はきちんと何かの役割を果たしていたのだ。
今年も3月には震災関連番組が数多く放送されている。ラテ欄にこれらの番組がある状況が、さらに7年後にはどうなっているのか。忘れないための記憶の鍵としても気にしていきたい。前記したように僕らの記憶は思っているよりも強固なものではないのだ。
※これを書いている中でTV番組関連のサイトを見ていたところ、前記した『21人の輪』の2年を経ての新作のアナウンスが目に入ったので、いちおう紹介しておきたい。
『21人の輪~相葉雅紀がみつめた子どもたち~』 【放送予定】3月27日(火)NHK総合 午後10:00~10:49 http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=13477
文 / 岡野勇(オタク放送作家)